朝日中高生新聞サンプル紙面
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私の母校千葉高ノーベル賞は人文科学、社会科学、自然科学、芸術の4分野があります。発表会では、それぞれの会場に分かれて最終ノミネート作品に選ばれた3年生が発表。ほかの生徒たちは会場を自由に移動して発表を聞きます。芸術分野で最初に壇上きうちりひとに立ったのは木内理一さん。「ハイドンの四重奏曲の研究」と題し、18世紀の作曲家ハイドンによる弦楽四重奏を分析。さらに自分でまねて作ったという曲を、友達といっしょに自らはチェロを担当して披露しました。質疑ではたくさん手が上がります。「今の曲のどのあたりがハイドン風なのですか?」「複雑な和音を入れないよう工夫したところです」「曲のタイトルは?」「この時代は作曲家ではなく、聞いた人がつけていたようです。みなさんがつけてください」社会科学分野の部屋でやまもときょうすけは、山本恭輔さんの「英語教育初等での導入に対する提言」の発表が始まりました。山本さんは県立千葉中学3年の時「少年の主張」で内閣総理大臣賞(最優秀賞)を受賞するなど、プレゼンの「達人」です。「英語学習で困ったことがある人はいますか?」。聞く人に問いかけ、まっすぐ前を向き楽しそうに話す山本さん。スライドで様々なデータを示しながら、文字と発音を結びつけて教える学習法「フォニックス」を小学校で教えるべき、と提案しました。表彰式では、先生の審査による各分野の最優秀4人が発表され、メダルが贈られました。最優秀作品は来春、論文集にまとめられます。千葉高ノーベル賞は2003年、総合学習として始まりました。担当のうちやひろゆき内谷弘行先生によると、研究テーマは社会的に意義があり、知的におもしろいかどうかを基準に生徒自身が決めます。「文系・理系の枠を超え、多様なテーマを持ってきます。顧問の役割は生徒の話を聞くことがメイン。主体性という、本校の生徒らしさが発揮される取り組みです」千葉県立千葉高校(千葉市中央区)の生徒は全員、1、2年生を通して一つのテーマを研究します。研究論文の中から最優秀作品を選び「千葉高ノーベル賞」を贈る発表会と表彰式が、今月2日にありました。(編集委員・吉田由紀)県立千葉高校・千葉高ノーベル賞44分分野野かからら「「知知的的でで面面白白いい」」研研究究にに(第三種郵便物認可)102015年(平成27年)9月27日進化の過程を研究している。西高では当時、女子はクラスの3分の1ほど。「男には負けない!」と思っていた。軟式テニス部の練習で日焼けした肌にショートカット。昼休みは大宮さんたちと議論を楽しんでいた。「やりたいことをやらせてくれた西高に感謝しています」勉強は「定期テスト対策くらい」というが成績は優秀。「試験に対する耐性があるというか、テストにうまく取り組めるんだと思います」西高OBの父は地球物理学者。母から「女が働くなら、時間に自由な大学教授がいい」と言われ、将来はなんとなくそう思っていた。東大から同大大学院へ。はじめは植物学を学んだが「細胞は小さすぎて見えない」と興味を持てず、模索を続けた結果、人類学教室にたどり着いた。歯のエナメル質の厚さちみつなどを緻密に計測する研究は、当時CT(コンピューター断層撮影)が普及してきたこともあり、方法論を確立する時期にあった。「どうしたらうまくいくのか考えるのがすごく好き」なのでぴったり。専門家になった。「研究者はすごく楽しいですよ」(編集委員・吉田由紀)としての器量の大きさを感じます」。3年生の時は1人で原子力発電所の問題を調べて展示。浪人時代からは薬害エイズ裁判の支援活動に夢中になった。理系として、環境問題や困っている人の問題を考えずにいられなかった。早稲田大学理工学部に進学したが、家計は厳しい。学費は奨学金と、宅配便の仕分けや塾講師などのアルバイトでまかなった。入学がかなわなかった東京大学を見返そうと、予備校講師になった。卒業式で大宮さんと共に答辞を読んだのが、国立科学博物館人類研究部こうのれいこの研究主幹、河野礼子さん(44、90年卒)。化石などの歯に注目して人類の勉強はできるが運動は苦手で、周囲となじめない。河合塾講師で化学の参考書シリーズの著作もおおみやおさむ知られる大宮理さん(44、1990年卒)は、そんな中学生だった。それが西高に入ると、勉強ができることはかっこいい、という文化。得意不得意も個性として認め合う。「生きてるってこんなに楽しいんだ!と思いました」マラソン大会をさぼってのゲーム中、先生に見つかった。「科学の進んだ現代に古代の競技は無意味」と苦し紛れに主張すると、先生は最後まで聞き「では走らなくて良いが、勉強しろ」。人に教える立場になった今、「当時の先生たちには教育者東京都立西高校④(東京都杉並区)勉強できるのはかっこいい!鉄道研究部部長だった大宮理さん。生徒会の予算会議で「根回し」して部の予算を増やしたことも。「高校が一つの社会だったんです」河野礼子さん。「数学の時間、先生に『河野がうなずいているということは、みんなわかりましたね』なんてイジられてました」千葉高ノーベル賞最終ノミネート作品のタイトル(!マークが最優秀作品)【人文科学分野】「音楽と心の関係」「食育―共感性の獲得と近代の超克―」「秘匿と開示~叙述トリックの文学的構造~」!「千葉高校構成員の『千葉高』をめぐる認識に対する諸考察」「明智光秀という男」【社会科学分野】「振り込め詐欺をなくすためには」「平和と戦争―非対称性を架橋する身体性―」!「英語教育初等での導入に対する提言」「地図から読み解く太平洋戦争」【自然科学分野】「RSA暗号の仕組み・安全性・限界について」!「静止摩擦係数を変化させる要因とそれに対する考察」【芸術分野】!「ハイドンの四重奏曲の研究」「Giselle第二幕~初演時の文献による考察~」「行進曲『軍艦』はなぜ耳に残るのか?」「時代背景から見るヨーロッパ絵画の目」「日本の『文字』文化」プレゼンに引き込まれ、聞く側からも鋭い質問が飛んだ発表会!どれも千葉市中央区の県立千葉高校千葉高ノーベル賞受賞者と優秀者たち。前列中央は鈴木政男校長研究の集大成として作った曲の演奏も私の母校千葉高ノーベル賞は人文科学、社会科学、自然科学、芸術の4分野があります。発表会では、それぞれの会場に分かれて最終ノミネート作品に選ばれた3年生が発表。ほかの生徒たちは会場を自由に移動して発表を聞きます。芸術分野で最初に壇上に立ったのは木内理一さん。「ハイドンの四重奏曲の研究」と題し、18世紀の作曲家ハイドンによる弦楽四重奏を分析。さらに自分でまねて作ったという曲を、友達といっしょに自らはチェロを担当して披露しました。質疑ではたくさん手が上がります。「今の曲のどのあたりがハイドン風なのですか?」「複雑な和音を入れないよう工夫したところです」「曲のタイトルは?」「この時代は作曲家ではなく、聞いた人がつけていたようです。みなさんがつけてください」社会科学分野の部屋では、山本恭輔さんの「英語教育初等での導入に対する提言」の発表が始まりました。山本さんは県立千葉中学3年の時「少年の主張」で内閣総理大臣賞(最優秀賞)を受賞するなど、プレゼンの「達人」です。「英語学習で困ったことがある人はいますか?」。聞く人に問いかけ、まっすぐ前を向き楽しそうに話す山本さん。スライドで様々なデータを示しながら、文字と発音を結びつけて教える学習法「フォニックス」を小学校で教えるべき、と提案しました。表彰式では、先生の審査による各分野の最優秀4人が発表され、メダルが贈られました。最優秀作品は来春、論文集にまとめられます。千葉高ノーベル賞は2003年、総合学習として始まりました。担当の内谷弘行先生によると、研究テーマは社会的に意義があり、知的におもしろいかどうかを基準に生徒自身が決めます。「文系・理系の枠を超え、多様なテーマを持ってきます。顧問の役割は生徒の話を聞くことがメイン。主体性という、本校の生徒らしさが発揮される取り組みです」千葉県立千葉高校(千葉市中央区)の生徒は全員、1、2年生を通して一つのテーマを研究します。研究論文の中から最優秀作品を選び「千葉高ノーベル賞」を贈る発表会と表彰式が、今月2日にありました。(編集委員・吉田由紀)県立千葉高校・千葉高ノーベル賞44分分野野かからら「「知知的的でで面面白白いい」」研研究究にに(第三種郵便物認可)102015年(平成27年)9月27日進化の過程を研究している。西高では当時、女子はクラスの3分の1ほど。「男には負けない!」と思っていた。軟式テニス部の練習で日焼けした肌にショートカット。昼休みは大宮さんたちと議論を楽しんでいた。「やりたいことをやらせてくれた西高に感謝しています」勉強は「定期テスト対策くらい」というが成績は優秀。「試験に対する耐性があるというか、テストにうまく取り組めるんだと思います」西高OBの父は地球物理学者。母から「女が働くなら、時間に自由な大学教授がいい」と言われ、将来はなんとなくそう思っていた。東大から同大大学院へ。はじめは植物学を学んだが「細胞は小さすぎて見えない」と興味を持てず、模索を続けた結果、人類学教室にたどり着いた。歯のエナメル質の厚さなどを緻密に計測する研究は、当時CT(コンピューター断層撮影)が普及してきたこともあり、方法論を確立する時期にあった。「どうしたらうまくいくのか考えるのがすごく好き」なのでぴったり。専門家になった。「研究者はすごく楽しいですよ」(編集委員・吉田由紀)としての器量の大きさを感じます」。3年生の時は1人で原子力発電所の問題を調べて展示。浪人時代からは薬害エイズ裁判の支援活動に夢中になった。理系として、環境問題や困っている人の問題を考えずにいられなかった。早稲田大学理工学部に進学したが、家計は厳しい。学費は奨学金と、宅配便の仕分けや塾講師などのアルバイトでまかなった。入学がかなわなかった東京大学を見返そうと、予備校講師になった。卒業式で大宮さんと共に答辞を読んだのが、国立科学博物館人類研究部の研究主幹、河野礼子さん(44、90年卒)。化石などの歯に注目して人類の勉強はできるが運動は苦手で、周囲となじめない。河合塾講師で化学の参考書シリーズの著作も知られる大宮理さん(44、1990年卒)は、そんな中学生だった。それが西高に入ると、勉強ができることはかっこいい、という文化。得意不得意も個性として認め合う。「生きてるってこんなに楽しいんだ!と思いました」マラソン大会をさぼってのゲーム中、先生に見つかった。「科学の進んだ現代に古代の競技は無意味」と苦し紛れに主張すると、先生は最後まで聞き「では走らなくて良いが、勉強しろ」。人に教える立場になった今、「当時の先生たちには教育者東京都立西高校④(東京都杉並区)勉強できるのはかっこいい!鉄道研究部部長だった大宮理さん。生徒会の予算会議で「根回し」して部の予算を増やしたことも。「高校が一つの社会だったんです」河野礼子さん。「数学の時間、先生に『河野がうなずいているということは、みんなわかりましたね』なんてイジられてました」千葉高ノーベル賞最終ノミネート作品のタイトル(!マークが最優秀作品)【人文科学分野】「音楽と心の関係」「食育―共感性の獲得と近代の超克―」「秘匿と開示~叙述トリックの文学的構造~」!「千葉高校構成員の『千葉高』をめぐる認識に対する諸考察」「明智光秀という男」【社会科学分野】「振り込め詐欺をなくすためには」「平和と戦争―非対称性を架橋する身体性―」!「英語教育初等での導入に対する提言」「地図から読み解く太平洋戦争」【自然科学分野】「RSA暗号の仕組み・安全性・限界について」!「静止摩擦係数を変化させる要因とそれに対する考察」【芸術分野】!「ハイドンの四重奏曲の研究」「Giselle第二幕~初演時の文献による考察~」「行進曲『軍艦』はなぜ耳に残るのか?」「時代背景から見るヨーロッパ絵画の目」「日本の『文字』文化」プレゼンに引き込まれ、聞く側からも鋭い質問が飛んだ発表会!どれも千葉市中央区の県立千葉高校千葉高ノーベル賞受賞者と優秀者たち。前列中央は鈴木政男校長研究の集大成として作った曲の演奏も

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