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集団的自衛権 首相はどう変えたい

 


 

攻撃された国と一緒に反撃可能に

 

 「集団的自衛権」を認めるかどうか。これが最近の政治の大きな焦点になっています。これまで政府は、日本はこの権利を国際法上は持っているけれども、日本国憲法はこれを使うことを禁じていると考え、そう説明してきました。安倍晋三首相は、この考えを変えようというのです。

 

 

 

日米共同の弾道ミサイル防衛特別訓練に参加するため停泊する日本のイージス艦(右から1、2番目)と米国のイージス艦=2月28日、米海軍横須賀基地©朝日新聞社

 

 

集団的自衛権は、自分の国(日本)が攻撃されなくても、ふだんから仲良くしている別の国(米国)が攻撃された時に、一緒に反撃する権利のことです

イラスト・たなかさゆり

 

 

国連 加盟国の武力行使禁止

 

 「集団的自衛権」って、どういうことなの?
 その前に、そもそも戦争はやっていいことなのかどうかを考えてみよう。


 やってはいけないことだと思うけど。
 そうだね。第2次世界大戦後にできた国際連合(国連)は、加盟国が武力を使うことを禁じている。


 でもたいていの国は軍隊を持っているし、最近でも戦争は時々起きるよね。
 だから国連は、ある国が武力によってほかの国を攻撃した時には、加盟国みんなが力を合わせて攻撃をやめさせることにした。これを「集団安全保障」という。


 それって集団的自衛権とは違うの?
 ちょっと違う。集団安全保障は、国際社会が一致協力する点に特徴がある。どこかの国が武力を使った場合、国連はまず経済制裁などによって攻撃をやめさせる。それでだめなら、国連軍を組織して実力によってやめさせる。ところが実際はこうした手続きをとろうとしても加盟国の意見が一致しないことがほとんどで、うまくいかない。


 そんなことしているうちに被害が大きくなってしまう。
 その通り。だから国連憲章は、加盟国が攻撃された場合に限り、その国が自力で反撃する権利を認めている。それが「個別的自衛権」だ。


 じゃあ、集団的自衛権というのは……。
 攻撃された国とふだんから仲良くしている別の国が、力を合わせて反撃できる権利だ。日本は米国と安全保障条約を結んでいて、日本が攻撃されたら、米国は日本と一緒に反撃することができる。

 

権利あるが、9条で認めず

 

 逆に米国が攻撃されたら日本も反撃するの?
 それは憲法9条で禁じられているというのが日本政府の立場だ。憲法に明記はされてはいないけど、そう解釈すべきだという考えだ。
侵略戦争への反省から生まれた9条は、日本が攻撃された場合は個別的自衛権によって必要最小限の反撃を認めている。一方、日本が攻撃されていないのに集団的自衛権によって米国の反撃に加わることは、憲法の認める範囲を超えている。政府はほぼ一貫してそのように憲法を解釈してきた。


 安倍首相はそれを改めようというわけね。
 首相は、米国が攻撃された時に一緒に反撃できないのは不公平だと主張している。ただ、日本はその代わり米軍に基地を提供し、維持費も負担しているのだから、必ずしもそうとはいえない。
首相はまた、北朝鮮の核開発などを考えれば、日本が集団的自衛権を使えるようにして日米同盟の力を強めるべきだと考えているんだ。


 確かにその方が安心かもしれない。
 どうすれば日本の安全をきちんと守ることができるのかという議論は必要だ。
ただし、首相は国民的な議論をすることなく、「日本は集団的自衛権を使えない」としてきた政府の憲法解釈を変更することで実現しようとしている。それは、国会で選ばれた首相といえども、憲法に従って政治を行うという近代国家では当たり前の「立憲主義」に反していると言われても仕方がない。

 

 

朝日新聞論説委員 国分高史

1964年生まれ。89年から朝日新聞記者。 佐賀県、福岡県などで勤務し、95年か ら政治部で首相官邸や外務省などを担 当した。今は政府や国会の動きのほか、 憲法や安全保障の社説を執筆。

 

2014年4月20日

 

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