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小笠原諸島に新たな島?

 

 


自然に広がる領土 火山国ならでは

 

 小笠原諸島の西之島付近の海底で火山が噴火して、小さな島ができました。活発な火山活動が続いていますが、この小さな島は海に消えず将来も残り、日本の新しい領土となるでしょうか。新しい島が誕生するのは地球上のどんな場所なのでしょう。

 

 

 

火山から溶岩を噴出する新しい島=11月24日、小笠原諸島・西之島沖、朝日新聞社機から©朝日新聞社

 

 

 

 

 どんな島ができたの。
 噴火は、東京の南1千キロにある西之島の南東沖500メートルの場所で始まり、11月20日に海上保安庁が確認したんだ。噴出した岩石が積み重なり、長さ200メートル、幅170メートル、高さ二十数メートルぐらいの島になっているよ。


 どうして急に島ができたの。
 東京都小笠原村にある西之島は、日本に110ある活火山のひとつ。東西、南北いずれも約600メートルほど、最も高いところで標高25メートルの小さな無人島だ。海面に出ている部分はわずかでも、海のなかをみれば、海底から直径が20〜30キロで高さが3千メートルの富士山のような円錐形の火山がそそり立っている。
西之島は1973年にも噴火している。海の上に見えるのはてっぺんだけだから、新しい頂上ができて、海から顔を出せば「新島の誕生」になるが、活火山のひとつが活動を再開したということだ。


 これからどうなるの。
 40年前の噴火でできた島は西之島新島と名づけられた。噴火は翌年にかけ続き、出てきた溶岩で西之島と地続きになり合体した。その後、波で崩されて、当時の新島の半分ぐらいは海に消えてしまった。
今回、噴火したのは、前回とほとんど同じ場所。最初、黒い噴煙が勢いよく出て、噴火を繰り返していた。これはマグマが水と接触して爆発することで起きる。バラバラの岩石が積み重なって島ができるが、積み木を重ねたようなもので波で崩されやすいんだ。
その後、マグマの通り道が安定して海水に触れずに地表に出てくる噴火となり、溶岩流も確認されたんだ。溶岩流が出ると、岩石が重なっていた表面がコンクリートで固めたように丈夫になる。島として残るかは、噴火が続き、たくさん溶岩が出て新しい島をしっかりさせるかによるよ。


 日本のものになるの。
 「島」は、国連海洋法条約で「自然にできた陸地で、水に囲まれ満潮時でも水面上にある」と定義されている。大洋の真ん中にできれば発見や占有した国が権利を主張して争いになるかもしれないが、今回は日本の領土の西之島のすぐ近くの領海内にできたため、島として認められれば、ちっちゃいけれど日本の領土となる。
領土が広がれば、その海岸から12カイリ (約22キロ)は領海となり、さらに200カイリ (約370キロ)までは、漁業や海底資源を独占できる排他的経済水域(EEZ)となるんだ。


 それは大きいね。
 島は小さくても大きな経済的な利益が生じる可能性があるから、領土問題がこじれるんだ。でも、今回の場合、すでに西之島の存在で領海やEEZが確保されているから、増えてもわずかだよ。


 ほかにも島ができたらいいね。
 火山は地球上を覆うプレートの境界付近や、ハワイ諸島のようなホットスポットと呼ばれる地球の深くからの火山の源が上昇してくる場所にできる。小笠原諸島は太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈み込んでいるプレート境界に位置する。だから、どこの国でも新島ができるわけではなく、自然に領土が増えるのも火山国ならではのことだね。

 

 

朝日新聞編集委員 黒沢大陸

1963年生まれ。91年から朝日新聞記者。科学医療部デスクなどを経て編集委員。社会部や科学部で、防災や科学技術行政、 環境、鉄道などを担当、 国内外で数々の災害現場を取材した。

 

2013年12月1日

 

 

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