政権奪回し「やり残し」の実現めざす

　自民党の総裁に安倍晋三さんが就任しました。過去にも２００６年から０７年にかけて総裁を務めたことがあり、自民党史上初の「再チャレンジ」となります。５年ぶりに返り咲いた安倍さん、首相だった前回と違って野党の党首としてどんな仕事をするのでしょう。

自民党総裁に選ばれ、会見する安倍晋三さん＝９月２６日、東京・永田町の自民党本部で撮影©朝日新聞社

　Ｑ　安倍さん、総裁選で石破茂さんに競り勝ったんだよね。
　Ａ　谷垣禎一前総裁の任期が９月で切れるから、９月26日に選挙をしたんだ。石破さんが本命と言われていたけど、決選投票の末、総裁の座をつかんだ。第25代の自民党総裁だね。

　 Ｑ　前は自分から辞めたんじゃなかったかな。
　 Ａ　２００９年に政権交代するまで、ほぼ自民党の総裁イコール首相だったんだ。首相・総裁だった07年７月の参院選で民主党に大敗したんだよ。責任を取って辞職するのかと思われたが続投し、その１カ月余り後に、新しい首相に代わった方が国会運営がうまくいくからと言って突然辞めた。
　 「無責任に職を投げ出した」と批判がすごかった。実は下痢や腹痛を繰り返す「潰瘍性大腸炎」という難病にかかっていたんだよ。

　 Ｑ　体調は改善したの。
　 Ａ　本人は「新しい治療薬ができたからもう大丈夫」と言っているよ。祖父は岸信介元首相、父は安倍晋太郎元外相。政治家としてエリートコースを歩み、戦後最年少の52歳での首相就任だった。もともとの「おぼっちゃま」というイメージに「非弱な」という枕ことばがついてしまった。

　 Ｑ　首相を辞めて５年間は何をしていたのかな。
　 Ａ　自分のせいで落選させてしまった人たちのところを中心に、全国をおわびに回っていたんだ。「あんたのせいで自民党がおかしくなった」としかられたこともあったようだよ。参院選で負けて過半数を割り、その後の福田康夫、麻生太郎内閣は法案がなかなか通らず苦労した。自民党が政権を手放すことになった責任の多くは、安倍さんにある。

　 Ｑ　なぜまた総裁になろうと思ったのかな。
　 Ａ　やり残したことがあるからだ。首相当時、「戦後レジーム（体制）からの脱却」を唱えていた。もともと、戦後に連合国軍総司令部（ＧＨＱ）から押しつけられた憲法を改正することを政治目標としている。どうしても実現したいんだ。
　 外交や安全保障にも関心が深く、尖閣諸島（沖縄県）や竹島（島根県）の問題で中国・韓国との関係が荒れているから、民主党政権には任せられないという思いも強い。

　 Ｑ　次の衆院選の結果次第では、安倍さんが首相になるのかな。
　 Ａ　自民党が勝てばそのままなるだろうね。首相当時は「お友達内閣」と批判された。首相を支える官房長官や首相補佐官に、昔から仲の良い議員をずらりと並べたからだ。幅広くいろんな意見を聞こうという姿勢が薄く、「自分と価値観の合う人しか周りに置かない」と言われたんだ。

　 Ｑ　今度はどうなの。
　 Ａ　自民党ナンバーツーの幹事長に総裁選で争った石破さんを置いた。実はあまり仲が良くないんだけどね。他にも石破さんに近い議員を登用するなど、前回と同じ失敗をしないという配慮がみられるね。

　 Ｑ　橋下徹大阪市長とも仲がいいんだよね。
　 Ａ　今年初めて会って、憲法改正をはじめ、いろんな政策で共通する部分があるのを確かめている。次の衆院選後、連携するかもしれないね。

『週刊朝日』編集部　渡辺哲哉

１９７３年生まれ。９９年から朝日新聞記者。 ２００４年に政治部。首相官邸や自民党、政権 交代後は民主党を担当。０７年〜０９年の大 阪社会部在籍時には、橋下徹府知事を取 材した。現在は『週刊朝日』の政治担当。

2012年10月21日