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2017年6月25日付
将棋の最年少棋士、藤井聡太四段(14、名古屋大学教育学部附属中3年)が21日、澤田真吾六段(25)との対局に勝ち、歴代最多に並ぶ28連勝を達成しました。デビュー戦から負けなしの快進撃。26日には単独1位をかけた対局に臨みます。(寺村貴彰、中塚慧)
「ここまで連勝できると思わなかったので、本当に運が良かった」
対局後の記者会見で、藤井四段はこう振り返りました。昨年12月のデビューから公式戦で勝ち続け、30年前に神谷広志八段(56)が打ち立てた最多記録に並びました。
新記録がかかる次の対局は26日。竜王戦決勝トーナメント1回戦で、増田康宏四段(19)と戦います。「うれしい気持ちに浸ってばかりいられないので、また気を引き締めてがんばっていきたい」と話しました。
会見に同席した師匠の杉本昌隆七段(48)は「ちょっと強すぎる」と驚きを隠せません。一局ごとに安定感が増しているといい、どこまで記録が伸びるかに注目が集まります。
朝中高特派員で、藤井四段と同じ中学に通う斉藤美羽さん(1年)は「クラスの友達みんなで『藤井先輩やった!』と喜びを分かち合いました」。
学校では、昼休みに図書室で本を読んだり友達と楽しそうに話したりする姿を見かけるといいます。一方、対局中の表情は「2歳違いとは思えないほど大人っぽい」と斉藤さん。「次も勝って記録を塗り替えてほしい。(名人や竜王などの)タイトルを取ってください」とエールを送ります。
藤井四段の活躍に、将棋を始める子どもが増えたり、関連グッズが品薄になったりと「藤井ブーム」も起きています。
日本将棋連盟によると、中学生以下の将棋教室の入会者は昨年の1.5倍の勢いです。
大阪市住吉区の「帝塚山こども将棋塾」は3月ごろから入塾者が増加。藤井四段のデビュー前と比べ、約2割多い約70人が在籍しています。「子どもたちの将棋への関心が高まったことは、ありがたい」と塾長の今井光さん。新井湧代さん(大阪市立阪南中1年)は「中学生が第一線で活躍しているのが励みになる」。プロをめざし、週4日通う笹尾侑生さん(大阪・追手門学院小3年)は「いつか藤井四段と対局して、勝ちたい」。
藤井四段が5歳から小学4年まで通った愛知県瀬戸市の「ふみもと子供将棋教室」。当時の生徒数は15人でしたが、現在は45人です。運営する文本力雄さんは「聡太は最初の1年で20級から4級に上がるほど上達が早かった。一生懸命、将棋に向かう聡太の姿勢を見習ってほしい」。
藤井四段が書いた「大志」の文字入りの扇子や、クリアファイルは、発売と同時に完売。日本将棋連盟によると、プロになったばかりの「四段」のグッズをつくるのは極めて異例です。藤井四段が幼少期に遊んだ知育玩具や初心者用の将棋も、売り上げが好調です。
日本将棋連盟広報課の担当者は「藤井四段の活躍で多くの子どもたちが将棋に興味を持ってくれています。この流れを止めないよう、面白さを伝えていきたい」。
28連勝を達成し、対局を振り返る藤井聡太四段。後ろは師匠の杉本昌隆七段=21日、大阪市福島区の関西将棋会館
記事の一部は朝日新聞社の提供です。