朝日中高生新聞
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地球外に生命はいる?

2017年5月14日付

望遠鏡で探査機で くまなく探せハビタブルゾーン

 「土星の衛星に水素があった」と先月、米航空宇宙局(NASA)が発表しました。こうした成果は「宇宙に生命はいるのか?」の答えにつながっていきます。自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター(東京都三鷹市)のくさのぶひこさんは「探査技術が上がれば、遠くの惑星で見つかる可能性はある」と期待します。(寺村貴彰)

条件は「水」と「岩石」

 生命はどのように生まれ、どう進化し、どこへ向かうのか。この謎に迫る学問が、アストロバイオロジー(宇宙生物学)です。比較的新しい学問で、惑星科学や天文学、地質学、生物学など様々な分野の専門家が集まり、研究を進めています。
 アストロバイオロジーセンターは2015年に創設されました。研究の中心は、地球に似た惑星を見つけ、生命が存在するか調べること。現在の技術では直接見ることはほとんどできず、生命が存在できる「条件」から天体を絞り込みます。
 「液体の水があることが条件の一つ」と日下部さん。液体の水は、固体や気体の状態と違って化学反応が起きやすく、生命活動に必要なエネルギーなどを生み出しやすいといいます。もう一つの条件は、地球と似た「岩石を主成分とする惑星」であること。
 この条件を満たし、生命が存在するのに適した領域を「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」といいます。太陽のようなこうせいのまわりに、ドーナツ状に広がっています。地球は太陽にもっと近ければ水が蒸発し、遠ければ凍っていました。
 近年、望遠鏡の発達や探査機の活躍で「宇宙で水がありそうな証拠を発見」というニュースが相次いでいます。火星ではNASAの探査車が水の流れたようなあとを撮影。地面の下に生命がいるかもしれないと期待されます。土星探査機「カッシーニ」は、土星の衛星「エンケラドス」の表面下に海があることを示すデータを送信。木星の衛星「エウロパ」にも生命が存在できそうな環境があると考えられます。いずれも岩石惑星で、二つの条件を満たします。
 太陽系で地球以外の惑星に人の形をした生命はいないとみられますが、「地面の下に微生物がいるかも」と日下部さん。
 太陽に近い水星や金星は熱くて水がなく、天王星から先の惑星は寒くて水が凍り、どちらも可能性は低いとみられます。

調査は太陽系外でも

 調査は太陽系の外でも進みます。恒星のまわりを回る系外惑星が1995年に初めて見つかり、これまで3千個以上を確認。特に大きな成果を上げているのがNASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」です。2018年に後継機「TESSテス」を打ち上げ、ハビタブルゾーンにある「第2の地球」を見つけようとしています。
 日本の国立天文台は、27年までに次世代超大型望遠鏡「TMT」を米ハワイのマウナケアに建設する予定。東京薬科大学などの研究チームは、日本初の宇宙実験「たんぽぽ計画」を進めています。国際宇宙ステーション(ISS)の実験棟「きぼう」の外側につけた装置で宇宙に漂うちりをとらえ、微生物などを探す計画。昨年9月に一部の試料が地球に到着。現在、分析を進めています。
 地球に最も近い恒星のまわりを回る惑星に向けて、切手サイズの探査機を飛ばす計画も。近いといっても約4光年も離れていて、普通の探査機では数万年かかります。小さな探査機に帆をはり、地上からビームを当てて光速の20%まで加速すると、20年で到着。通り過ぎるとき写真を撮り、地球に送るといいます。
 本当に宇宙人はいるのでしょうか。日下部さんは「私たちのいる銀河系に、太陽のような星は1千億個以上。銀河はほかにもたくさんあります。そう考えると『やつらはいる!』と思うんです」。

太陽系のイメージ図、生命を探す新技術のイラスト
イラスト・佐竹政紀

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