朝日中高生新聞
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2030 SDGsで考える

2020年3月15日付

第12回「エネルギー」

地球にやさしく、末長く

 電気のない生活を想像したことはありますか? 世界には電気のない生活をしている人が約11億人います。多くはアフリカとアジアの農村部に住んでいて、外灯の光で勉強している子どもたちもいます。
 国連が掲げる全世界の共通目標「SDGsエスディージーズ(持続可能な開発目標)」には、2030年までに解決すべきものとして「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」があります。エネルギーは貧困や健康、教育にかかわっていて、途上国の大きな課題だからです。
 ただ、電気などのエネルギーをつくる主な資源は、石油や石炭などの化石燃料です。このまま使い続ければ、近いうちになくなってしまうと言われています。化石燃料を燃やしたときに出る二酸化炭素が、地球温暖化にもつながっています。
 そこで注目されているのが、太陽光を始め、自然を生かした再生可能エネルギーです。SDGsは「世界の再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」こともターゲットにしています。
 日本の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は18年度で18%です。30年時点で22~24%を目標としていますが、実現できるのでしょうか。(浴野朝香)

再生可能エネルギーは主力になれる?

太陽光、地熱…日本もできるはず

 再生可能エネルギーは今後、化石燃料などに替わり、世界の主力エネルギーになれるのでしょうか。日本ではどうでしょうか。科学技術振興機構の低炭素社会戦略センター研究顧問、やまこういちさんに聞きました。

欧州が先進 電気代安く

 再生可能エネルギーには太陽光のほか、風力、水力、地熱、バイオマス(動植物などから生まれた生物資源)などがあります。2018年の世界の電源構成のうち、再生可能エネルギーの比率は25.1%を占めます。日本は18%なので、世界を下回っています。
 一方、ヨーロッパは再生エネルギーの先進国です。18年の電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合が30%を超えている国がほとんどです。スウェーデンは63%、デンマークは59%と半分以上。ドイツ、スペイン、イタリアなども30%を超えています。
 発電コストにも違いがあります。太陽光発電で1キロワットの電力を1時間使用した時の電気代は、日本では約10円。技術開発に力を入れているヨーロッパでは、4円程度です。
 山田さんによると、20年後には世界で再生可能エネルギーが主力になります。エネルギーの7割以上を化石燃料や原子力に依存している日本は、再生可能エネルギーを主力にすることはできるのでしょうか。
 山田さんは「急に変えることは難しいけれど、できるはず」と言い切ります。
 例えば、太陽光発電。耕作されず放置されている耕作放棄地は増える傾向にあり、15年には42万3000ヘクタールありました。ここにパネルを設置して発電すれば、発電可能量は1.5倍になります。
 マグマに熱せられた高温の岩体を利用する地熱発電も「今後の研究でまだまだ増やせる」と山田さん。火山や天然のふんこう、温泉などの近くでは、深さ数キロの比較的浅いところに300度以上の岩盤があります。山田さんは「3000メートルあたりまでなら現在の技術で掘ることができる」といいます。

ダム利用で揚水発電に可能性?
商業ベースに乗せ、世界に追いつけ!

 山田さんが提案するのは、ダムと池の高度差を利用して発電するようすい発電です。現在の揚水発電では、高さの差がある上と下の土地にそれぞれ池をつくり、上から下に水を落下させる力で発電しています。この方法では池を二つつくる費用がかかります。
 山田さんが目をつけたのは、全国に約2700カ所ある多目的ダム。山間部に多いことから、すでにある多目的ダムを下の池として利用し、周囲の高台に上の池を建設することで、建設費用を減らせます。
 これらを実現化するために、どんな課題があるのでしょうか。山田さんは「技術の開発だけではなく、商業ベースに乗せることが大切です。世界に追いつくには今、始めなければ」と話します。

山田興一さんの写真
山田興一さん

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