朝日中高生新聞
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  • 月ぎめ967(税込み)

1面の記事から

2030 SDGsで考える 特別編

2020年1月5日付

みんなで行動者になろう!

 私たちは「行動者」になる――。国連が定めた「SDGsエスディージーズ(持続可能な開発目標)」の達成期限の2030年まで、あと10年です。新年の始まりに、未来を変えるための目標を考えてみませんか。(猪野元健)

 15年9月、国連に加盟する193のすべての国が賛成して17の目標を定め、30年までの達成を目指すことになりました。これがSDGsです。「誰一人取り残さない」をキーワードに、国や団体、年齢の枠を越え、目標の達成に向けて取り組んでいます。
 17の目標には、具体的なターゲットが定められています。例えば「1.貧困をなくそう」には「2030年までに、現在1日1.25ドル(約135円)未満で生活する人々の貧困をあらゆる場所で終わらせる」などがあります。しかし、国連広報センター所長のもとかおるさんは「今のままでは達成は難しい」といいます。SDGsの認知度は高まってきていますが、一人ひとりの行動にはまだまだ結びついていないと指摘します。
 朝日中高生新聞は月に一度、SDGsをテーマにした特集を掲載しています。昨年12月には、東京でSDGsのワークショップを開催しました。ベンチャー企業ユーグレナの最高未来責任者(CFO)のざわきょうさん(高2)、FSCジャパンのジュニアアンバサダーのなかざわさん(高1)をゲストに招き、北海道から大阪までの読者21人が「行動者となるためのヒント」を考えました。参加者からは「行動に一歩移す勇気が出た」という声があがりました。

朝日中高生新聞 SDGsワークショップ報告

社会の課題を「ジブンゴト」に
タピオカ→環境問題→SNS発信

 ワークショップでは、10代の読者21人が6チームに分かれ、中高生ならではの視点で社会の課題を解決する方法を探りました。貧困やジェンダー、気候変動などを「ジブンゴト化」(自分たちのこととして考える)して、行動するためのアイデアを話し合いました。
 「中高生ならではの強みって何だろう?」。身近なものや流行しているものをふせんに書き出してみると、「タピオカ」「SNS発信力」「部活」「制服」「文化祭」などのキーワードがあがります。なかなかアイデアが出ないチームには、ゲストのざわきょうさん(ユーグレナCFO)が「親にはできないけど、私たちにはできることを考えてみよう。例えば、公園ではしゃぐなんて、大人は恥ずかしくてできないよね」とアドバイスします。
 次に、似ているアイデアをまとめ、SDGsの17の目標との関連を考えました。最も多くのチームが書いた「タピオカ」。人気ですが、容器やストローのごみが環境汚染につながると心配する声があります。あるチームは「SNSで問題にしてみたらどうか」という意見から「12.つくる責任 つかう責任」の目標と関連づけました。
 別のチームは、ペンケースが文房具でパンパンな人が学校にいることに着目。「必要以上の文房具は、学校でフリーマーケットを開催したらどうだろう」と、同じく12番の目標との関係が深いアイデアを出しました。
 「部活」や「委員会」を出したチームは「10.人や国の不平等をなくそう」の視点で考えました。学校の部活や委員会でも、平等ではない場面があります。こうした課題を話し合いで解決していくことで、世界にあるさまざまな問題の解決に広げられるのではないか、と結論づけました。
 中高生に人気の都市を作るゲームについて「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「11.住み続けられるまちづくりを」につなげたチームもありました。
 SDGsは遠くで起きている問題ではありません。身近なものから課題の解決を考えていくことで、それぞれの目標を「ジブンゴト」に落とし込みました。(寺村貴彰)

「行動者」の先輩2人からアドバイス
とりあえずやれば広がる

 ゲストの小澤さんとなかざわさん(FSCジャパンのジュニアアンバサダー)は、それぞれの活動を紹介。「行動者になるには」がテーマの座談会もしました。
 ファシリテーターのかやりんろうさん(東京・ぶん小中学校教諭)が2人に、一歩を踏み出したきっかけを尋ねると、「とりあえず、やってみよう!という思い」と口をそろえました。
 中澤さんは中学生の時は「考えるだけで行動に出なかった」と振り返ります。高校で担任の先生に環境問題に興味があると伝えると、すすめられたのがFSCの勉強会でした。「学んでいくうちに、みんなに伝えたいと思うようになった」といいます。
 小澤さんは中学生の頃からさまざまな活動に顔を出していました。「ちゅうちょせず、飛び込んでいったことがいま、形になっています」
 最初は不安もありましたが、「踏み出して良かった」という2人。「バックグラウンドが違う人と触れ合うことで視野が広がり、価値観も豊かにできます」と小澤さん。中澤さんも「FSCジャパンのジュニアアンバサダーになって、人とのつながりがどんどん広がっています」。
 小澤さんは周囲の友人も「行動者」なので「みんな違う分野で頑張っていこう」と高め合っているといいます。ユーグレナ社での活動について「将来を生きる子どもとして、社会で意味のあることをやってきたい」。
 中澤さんは建築家になるのが夢です。ジュニアアンバサダーの経験をふまえて「サステイナビリティー(持続可能性)のある建築など、社会問題と絡めて建築のことを考えていきたい」と話します。

今日の経験を発信

 最後に2人が参加者にメッセージを送りました。
 中澤さんは「まず、今日あった出来事をだれかに話してください。伝えるということが大事。どんどんつながっていくと思います」。
 小澤さんは中学生の時に新聞に投稿し、それを読んだ大学の教授に声をかけられてイベントに参加したエピソードを披露。「自分の意見を社会に発信すれば、気付いてくれる人はいる。自分の体験したこと、思ったことをここでとどめないで」と話していました。(前田基行)

身近なことをふせんに書き出し、SDGsの目標との関連を考えている様子の写真
身近なことをふせんに書き出し、SDGsの目標との関連を考えました

日本森林管理協議会(FSCジャパン)のジュニアアンバサダー、中澤璃々子さんの写真
日本森林管理協議会(FSCジャパン)のジュニアアンバサダー、中澤璃々子さん。豊かな森から作られた製品であることを示し、世界でも広く知られている「FSC認証」について、10代の立場から普及している

ユーグレナCFOの小澤杏子さんの写真
ユーグレナCFOの小澤杏子さん。微生物のミドリムシを研究し、食品やバイオ燃料にする企業で、SDGsにも力を入れる。10代の視点で会社ができることを考え、イベントでプレゼンテーションなどをしている

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