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2019年8月18日付
あなたにとって、学校は自分らしくいられる場所ですか。さまざまな生きづらさから、夏休みが明けるのを不安に思う人たちへ、かつて学校に行きたくないと感じていた人たちが語ってくれました。学校以外の居場所、学ぶ場所も多様になっています。(今井尚、畑山敦子、近藤理恵)
タレントの中川翔子さん(34)は中学時代にいじめに遭い、学校に行けない時期もありました。その経験をオープンに語り、SNSやテレビ番組を通じて同じような思いを抱えた人たちの声を受け止めています。
「あの頃は学校に行くのも、休み時間を過ごすのも本当に長くてつらかった」。私立中学に入学し、「後にボスになる子と最初うまく話せなかったことから、スクールカーストを転がり落ちていきました」。陰口を言われ、物を隠されたこともあり、先生も味方だとは感じられませんでした。
支えになったのは、小学校の頃からの友達で、同じ中学に通っていた木村さんでした。「いじめられていると友達に会うのが恥ずかしくて、声をかけなかったのですが、中3の後半で席が近くなりました。カーストの低い私といると損なのに、靴箱がへこまされているのを見ても変わらず接して笑ってくれた。自分がその立場になって考えると、すごく勇気のいることです。隣にいてくれて一人じゃないと思える、木村は私にとって『隣る人』です」
通信制高校に入学し、芸能活動を始めます。そこで「明るい遺書」のつもりで始めたのがブログです。「中学の文集は(いじめた方の)グループが作っていたから私の写真がほとんどなく、今死んだら私がどんな存在だったか、歴史のちりと消えるのか、と。だったら好きだったことを残しておこうと思いました」
「中学できもいと思われていたけれど、漫画が好きということを書いたら『私も』という意見が来て、自分だけではないんだと気づいた。なんだ、生きていていいんだと思いました」。ブログを通じたつながりや、家族のいる自宅が居場所でした。
高校では「ひきこもっていた人もいればヤンキーもいて、ギャルから絵がめっちゃうまいと中学と真逆のことを言われ、いろんな人がいるんだと思いました」。
学校は勉強やいろいろな人に出会う場。「行かなくていい、と言い切るのは違う気がします。通っている学校で死ぬほど悩むなら、違う選択肢があります」
自身の経験や、つらいと感じている人への思いをつづった『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文芸春秋)が今月、発売されました。文章に加え、得意な漫画で中学時代の思いや大人になって伝えたいことを描いています。「本が苦手な人には、絵を眺めてもらうだけでもうれしいです」
「クラスで全員とうまくやれる人はすばらしいけれど、心から笑い合える人がそこにいなければ、どこかにいます。つらい夜がある時、ふっと心に寄り添える本になればと思います」
なかがわ・しょうこ 1985年生まれ、東京都出身。「しょこたん」の愛称でドラマ出演、声優、歌手など幅広く活躍中。
「10代で『死にたい』と思った夜を過ごした私が今の10代に何を伝えられるか、考えながら本を書きました」と話す中川翔子さん=7月、東京都千代田区、品田裕美撮影
『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』(中川翔子、文芸春秋)
記事の一部は朝日新聞社の提供です。