朝日中高生新聞
  • 日曜日発行/20~24ページ
  • 月ぎめ967(税込み)

1面の記事から

2030 SDGsで考える

2019年4月21日付

2030年へ 何ができるか

 2030年、みなさんはどんな大人になっているでしょう。答えは誰にもわかりません。その道を切り開くのは、あなた自身だからです。そのころ社会はきっと想像を超えた変化を遂げているはずです。では、どうやって将来を考えたらよいのでしょうか。そのヒントになるのが、国連で採択された全世界の共通目標「SDGsエスディージーズ」です。
 Sustainable Development Goals。日本語で「持続可能な開発目標」です。貧困やエネルギー、資源、不平等など、地球規模の17の課題を30年までに解決しようと、世界中の人たちがチャレンジしています。SDGsが達成された社会をさらに未来へとつないでいくのが、みなさんです。
 今月から大型連載「2030 SDGsで考える」を始めます。SDGsの達成に向けて、具体的に行動する人や社会の課題を月1回、紹介します。(猪野元健)

貧困はいま
難民の子に安心を 課題は複雑

 世界で貧困が特に問題になっているアフリカ。中でも南スーダンでは内戦が続き、たくさんの人が隣国ウガンダに逃れています。しかし、ウガンダも生活が厳しい人たちが多く暮らす国です。こうした状況で、つらい思いをしている子どもたちを支えたいと、活動する人がいます。わたなべさん(26)もその一人。国家公務員を辞め、国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の一員として、ウガンダにある南スーダンの難民居住区に入りました。

渡邊紗世さん=国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」

物資配布や学校建設だけでは不十分

 2016年7月、南スーダンで武力衝突が起きて、ウガンダに多くの難民が避難しました。その数は約80万人にのぼります。仕事は少なく、難民は現金収入を得ることが難しい状況です。内戦で親を失ったり、必死で逃げるなかで親とはぐれたりした子どももいます。
 渡邊さんは今年2月までの1年あまり、ウガンダで約20人の現地スタッフのまとめ役として難民の子どもたちを支援してきました。
 現地で気付いたのは「見えにくい問題」が山積みだったこと。親から虐待を受け、近くに大人がいても、必要な医療や教育を受けられない子どももいます。「貧困」は、生活を支える物資の配布や学校の建設だけでは解決しない、さまざまな問題と連鎖していました。
 渡邊さんたちは、子ども一人ひとりの状況に合わせて支援するケースワーカーを育てました。家庭訪問をして、必要な支援を届けるためです。難民の居住区に100メートル四方の「こどもひろば」を設置。ボランティアの大人と踊りや歌を楽しみ、遊具やサッカーなどで遊べるようにすると、毎日600人以上の子どもが利用するようになりました。難民居住区で教育や栄養の支援を受けられる場もつくりました。
 「目標は、子どもたちが安心できる生活を取り戻すこと。そして、支援団体がいなくなっても、現地の人たちで難民の子どもたちを支えていける仕組みを整えることです。国連やウガンダ政府とともにプロジェクトを進めました」

現地で人材育成 根気強く

 ただ、支援活動は簡単には進みませんでした。日本人は渡邊さんだけで、現地で英語を話せない人とはコミュニケーションがうまく取れません。ボランティアやケースワーカーを育てる研修をしても、情勢の変化で故郷に戻る人もいます。いろいろな人の声に耳を傾けてねばり強く取り組み、後任の日本人スタッフに仕事を引き継ぎました。
 中学生の時、くろやなぎてつさんが書いた『トットちゃんとトットちゃんたち』を読んで、国際協力の分野に関心を持った渡邊さん。大学卒業後に選んだ道は国家公務員でした。国際協力にかかわる部署で働くなかで、「現場にもっと近いところで活動してみたいと思うようになりました」。17年にセーブ・ザ・チルドレンに転職。一つ目の駐在先がウガンダでした。
 渡邊さんは、南スーダンで内戦が続くのにニュースになることは少なく、「情報を発信して、社会の関心を高めることも大切と感じた」と話します。貧困の連鎖に目を向け、日本を含めて「誰一人も取り残さない社会」づくりに挑戦していきたいといいます。

関連記事

最新の記事

    記事の一部は朝日新聞社の提供です。

    • 朝学ギフト

    トップへ戻る