朝日中高生新聞
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1面の記事から

夏休み明け、登校するのがつらいきみへ

2018年8月26日付

#Withyou ~きみとともに~

不登校など経験者&朝中高特派員 座談会

 夏休み明け、学校に通うのがつらいと感じている人はいませんか。中には自ら命を絶ってしまう人もいます。いま悩んでいる子どもたちにメッセージを届けようと、不登校などを経験した人と朝中高特派員が今月2日、朝日新聞大阪本社に集まり、話し合いました。
●この特集は朝日新聞との共同企画です。

孤独じゃない、頼っていいよ

不登校なぜ 親に反抗/学校が面倒に/勉強のスタイルが合わず

 ――どんなことがあって学校を休むようになったのですか?
 ゆか 中2の途中からです。派手な友達と仲良くなって交友関係が広がり、自分の服装や髪の色も派手になって。理由は親への反抗心。学校に行かないと、親が仕事を休んで見張るんです。監視の目をかいくぐって遊びに行った。親に嫌がらせをしていたんだと思う。
 はるく 受験して入った中学校は宿題が多くて勉強のスタイルが合わず、しんどくなりました。部活動にも行けなくなり、先輩たちに迷惑をかけてしまって……。校門の前で「はあ、行きたくないな」と思い悩む時間がだんだんと長くなり、1年の秋からほとんど行かなくなりました。
 サトミ 私は小4のときから学校が面倒になって。お母さんも何も言わなかった。他のきょうだいも不登校でした。中1になり、担任が毎朝家まで迎えに来てくれて、おかげでなんとか通えたこともありました。でも2年生でかわると、家でテレビを見て、寝る生活でした。

何が転機に 施設での体験/子の存在/理解ある先生との出会い

 ――どんなことが転機になりましたか。
 ゆか 中3で児童自立支援施設に行きました。そこで畑仕事をした後に塩おむすびを食べた時、施設の人に「初めて人間らしい顔をしたな」と言われてハッとしました。それまで自分の気持ちに無頓着だったことに気づいたのです。
 そして、不登校や非行の子を受け入れる北海道・ほくせい学園いち高校のことを教えてもらいました。北星余市の生徒は、道を外れてきた人もいて、年齢もばらばら。先生もあだ名で呼び合い、人としてつきあってくれる学校でした。居心地がよく、肩の荷が下りたように感じました。
 はるく 僕は中3からフリースクールに通い始めました。時間割を自分で決めて勉強する環境が、自分に合っていたと思います。最近はプログラミングをしたり、自分たちでスクールのイベントを企画したりすることに打ち込んでいます。
 サトミ 中2のときに妊娠、出産をしました。子どもは乳児院に、自分も施設に入り、定時制高校に通いました。子どもと一緒に暮らすため、高校を卒業すること、バイトしてお金をためることを目標にしていました。中学の頃の自分とは全然違いました。それは、子どもの存在が大きかった。自分が食べさせて、学校も行かせないといけないから。
 Tenテン 小3のときに転校した公立小で、文字を書くことなど苦手なことがあって、いじめられました。みんなにできて自分にできないことに、すごいしんどさを感じた。そのころ母親から、発達障がいが原因だと聞きました。
 でも、小4のときに理解のある先生に出会えました。親も学校に「こういう支援があるといい」と言ってくれて。理解してくれる大人が増えていき、学校が好きになり、行き続けました。

 内閣府がまとめた2015年版の自殺対策白書によると、約40年間の18歳以下の自殺者数を1年の日別で比べると、9月1日が131人で最多でした。8月31日は92人、9月2日は94人と前後の多さも目立ちます。同様に、夏以外の休み明けも増える傾向がありました。

届くといいな メッセージ

つらいこと 周りに合わせて気を使う/陰口や嫌がらせを受けた

 ――朝中高特派員の皆さんも学校生活でつらいことなどはありますか?
 サクラ 小学生の頃からアニメが好きです。でも、アニメやゲームの話をしたら「気持ち悪い」って言われたことがあって。中学生になってからも「オタク」だといじめられると思って、自分からは話さなかった。高校生になったいまは、クラスの中心にいる派手な子たちと仲良くなり、みんなに趣味も合わせるようになりました。
 本当は興味がないのに韓国アイドルの歌を覚えたり、グッズを集めたり……。周りに気を使うのがしんどいです。どうにか学校には行っているけど、どうしていいのかわからない。
 ナナミ 小学校で陰口を言われたり、教科書を破られたりする嫌がらせを受けた時期があって、とてもつらかった。でも4年生のとき、先生に「つらい」と打ち明けたら、親身になって聞いてもらえました。いつもおろしていた髪を「ポニーテールしてみたら?」と言われ、結んでみたら視界が広がった気がした。一つの工夫で考え方が変わることを知り、私の中で大きな経験になりました。
 ミサキ 小4のとき、父の転勤で中国に行き、様々な国の人と英語で学ぶインターナショナルスクールに通いました。「アジア人だから」「日本人は来ないで」と言われ、学校に行くのが嫌になった。でも、自分で希望して行った学校だったので、親から「選択に責任を持ちなさい」と言われました。その後、少しずつ言葉の壁が消えていき、中国にいた4年間は自分が一番成長できた期間だと、今は思っています。

贈る言葉は 独りじゃないと知らせる/自分さらけ出すよう促す

 ――生きていくのがつらい、しんどい、と思った時にかけてもらいたい言葉や、かけてあげたい言葉を挙げ、メッセージを考えてください。

 「美味おいしいもん食べに行こ!」「そっとしといてあげる」「がまんしなくても良いんだよ」「いつでも話聞くよ」……。

 ゆか 出てきた言葉で共通しているのは「孤独じゃない」って思わせてもらえる声かけかな。歩み寄ってくれる、わかりたい気持ちがあるよって思わせてくれる言葉が安心するのかも。
 サトミ 「自分を出してごらん」が良い。自分のことを隠しているのは良くない。さらけ出して周りに理解してもらう。周りに流されるのは良くないから。
 はるく 僕は「孤独じゃないよ」。自分を出せない環境にいる人って多くて、そういう人は自分を認めてくれる人はいないって諦めちゃう。見えていないだけで、君のことを思ってくれる人がたくさんいるって伝えたい。
 Tenテン 経験として完全に一人になった時が一番しんどかった。応援してくれる人がいると知ったら、孤独感がなくなる。勇気が出るのでは。
 サクラ 一人の時は抱え込みますよね。結論が出せない。どうしたらいいのかわからなくなっちゃう。一緒にいてもらって、気分転換できるのがいいと思う。
 ゆか 頼って、というのもいいね。1回深呼吸して、誰か自分に手をさしのべてくれている人に勇気を出し応えてみる。自分が見逃しているけど自分に向けられた愛情もあるはずだから。それを見逃して閉じこもっていることもあると思う。そこに気づいてほしい。
 ミサキ 自分では解決できない問題も絶対にある。人に頼るのも大事なのかな。
 サトミ 人は一人になると落ち込む。落ち着いて見渡せば、一人でも周りに頼れる人がいる。

会を終えて 生きる方法一つじゃない/経験を話し合う場は大切

 「孤独じゃないよ」「自分を出してごらん」「いつでも頼ってくれていいよ」が、座談会からのメッセージに決まりました。
 ゆか ここで話している私たちもそれぞれいろんな経験をしてきたけれど、まだもっと積み重ねていく。このメッセージが、いま少しでも苦しい思いをしている人の目にとまれば。
 ミサキ 今日参加して、生きる方法はいくつもあって、一つだけじゃないんだ、と学んだ。自分は人の目を気にするタイプ。恥をかきたくないから、という理由で物事を決めてきた。恥をかいても良いじゃん。
 ナナミ いろんな人のつらい体験を聞いて、自分自身のしんどかった経験を素直に話せた。壮絶に思える話も、きっかけは自分にも身近なこと。こういうふうに話す場って、これからも大切だなと思いました。

【不登校を経験したり、生きづらさを感じたりしてきた4人】

 おおさん(21)=ゆか 大分県出身。中学から家出などを繰り返し、中3の春に児童自立支援施設へ。その後、北海道・ほくせい学園いち高校に進学。今は都内の大学生。
 ぐらはるさん(16)=はるく 京都府在住。受験して入った中学ではストレスなどで1年から不登校に。3年からフリースクールに通い始め、今は通信制高校でも学ぶ。
 サトミさん(22) 東海地方の会社員。小学校で不登校、中2で未婚の母に。自立援助ホームなどで生活し、高校卒業後、施設に預けていた長男と暮らす。
 Tenさん(20) 大阪府の大学生。文字を書くことが困難などの発達障がいがある。この名でネットなどを通じて障がい者に関する自分の意見を発信している。

【朝中高特派員】

 サクラさん(18) 関西地方の高校生。小学生時代、アニメ好きを明かして「気持ち悪い」と言われ、保健室登校の経験も。本当の自分を出せないのが悩み。
 ミサキさん(18) 関東地方の高校生。父の転勤で海外生活をした際、「アジア人だから」と避けられた経験などをかてに、国際交流やボランティアなどについて学ぶ。
 ナナミさん(14) 関東地方の中学生。小学生時代、プリントを隠されたり教科書を破られたりするなどの嫌がらせを受け、親に相談して転校。医師になるのが夢。

(カタカナ名、ローマ字名は仮名)

学校に行くのがつらくなった場合の様々な選択肢の例を示した図
(C)朝日新聞社

子どもや親向けの主な相談先の一覧表
(C)朝日新聞社

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