朝日中高生新聞
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「平和な未来にご協力を」

2018年8月12日付

核廃絶への署名集める「高校生平和大使」

 核兵器廃絶を求める署名を毎年集め、国連機関へ届ける「高校生平和大使」は、今年のノーベル平和賞の正式候補です。1998年から国連を訪問。被爆者の思いを受け止め、「平和な未来をつくろう」と、この夏も訴えています。(前田奈津子)

今年のノーベル平和賞の正式候補に

被爆者の思いを世界中の人へ

 「核兵器廃絶と平和のために署名活動を行っています。みなさまのご協力をお願いします」。7月22日、JR長崎駅前の広場で「高校生平和大使」らが歩行者に声をかけていました。時には近寄って協力を求めます。足を止めて署名してくれた人には「ありがとうございます」と丁寧にあいさつしていました。
 長崎県立いさはや高校の2年生は、今年選ばれた第21代高校生平和大使の一人です。
 祖母は被爆者ですが、被爆体験は今まで「思い出したくないから」と話そうとはしなかったといいます。高校生平和大使になり、国連機関で「おばあちゃんの思いを伝えたい」と考え、話を聞かせてほしいと頼みました。
 原爆が投下された後、ひどいやけどを負った人や、頭に被害を受けた赤ちゃんを抱いたまま動けない女性がいたことを祖母は話してくれました。「おばあちゃんのように苦しむ人を二度と出したくない、核兵器の恐ろしさを伝えなければならない、と思いました」 
 第21代の高校生平和大使は20人です。全国から応募があった約500人から選ばれました。今年6月、広島で研修と結団式があり、被爆者の話を聞いたり、広島平和記念資料館(広島市中区)を見学したりしました。今月には長崎でも研修を受けました。集めた署名を届けに、26日からスイス・ジュネーブにある国連欧州本部を訪ねる予定です。帰国後、高校生たちが現地での活動を報告します。

集まった167万筆 大きな力に

 20年にわたる高校生の活動です。それぞれの代の任期は1年ですが、歴代の大使の思いは受け継がれてきました。
 2006年に第9代高校生平和大使を務めたおおかわおりさん(30)は、国連欧州本部で平和への思いを伝えたことが印象に残っているそうです。その後、平和をテーマにした映画を製作。若い世代に平和の大切さについて考えてほしいと願っています。
 ノーベル平和賞の正式候補になったことについては「受賞できるかどうかわかりませんが、核兵器のない世界に向けて、できることを一つずつしていきたい」。
 長崎県立長崎東高校の3年生は昨年8月、第20代高校生平和大使として国連欧州本部を訪ね、核兵器廃絶を求める署名を他のメンバーと届けました。各国の外交官やNGOの人と話す機会もあり、高校生の話を熱心に聞く様子に「思いが通じたと感じました」と振り返ります。
 歴代の高校生平和大使が国連機関に届けた署名数は約167万筆といいます。署名活動は、高校生平和大使の募集をきっかけに集まった高校生たちが「核のない平和な世界を目指したい」と01年から始めました。「高校生一万人署名活動」と呼ばれます。平和大使を含む高校生らが各地で取り組んでいます。
 長崎・かっすい高校の2年生もその一人です。「行動することが大切。小さいことでも積み上げていけば、大きな力になると信じています」

【高校生平和大使】1998年、インドとパキスタンが核実験をしたことを機に、長崎の市民団体が地元の高校生2人を米ニューヨークの国連本部に派遣したのが始まり。第3代からは、スイスの国連欧州本部に派遣している。作文や面接で選考される。今年の第21代を務めるのは、広島、長崎を含む15都道府県の20人。

軍縮会議の様子を傍聴席から見守る高校生平和大使らの写真
軍縮会議の様子を傍聴席から見守る高校生平和大使ら(上)=17年8月、スイス・ジュネーブの国連欧州本部
(C)朝日新聞社

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