朝日中高生新聞
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自衛隊撤収後も激しい内戦続く南スーダン

2017年6月18日付

 アフリカ中部の南スーダンでは、同じ国の国民同士が互いに殺し合う内戦が続いている。日本の自衛隊は国連の平和維持活動(PKO)に参加していたが、5月末で撤収。内戦は激しさを増し、国民の約4割が飢え、1割以上の人々が国の外へと逃げ出している。

石油の支配権めぐる大統領と副大統領の対立から戦闘に

食料難、子ども110万人が深刻な栄養失調

 気温約40度。しゃくねつの国・南スーダンの首都ジュバにある病院を訪ねると、十分に食事を取れないために、がりがりにやせ細ってしまった28人の子どもたちが、扇風機もクーラーもない病室のベッドに横たわっていた。
 2歳2カ月の男の子、デン・アウエルちゃんは体重が普通の子の半分以下の5.6キロしかない。横に寄り添うお母さんは「戦争が始まってから給料が払われないことがあり、毎日食べ物を買うことができない」と話した。
 南スーダンは2011年に独立したばかりの世界で一番新しい国だ。地下には豊富な石油が埋まっており、それを海外に輸出することで、豊かな国になると期待されていた。
 しかし、独立直後から、その石油の支配権をめぐって、国を統治するはずの大統領と副大統領が対立。13年には、大統領を支持するグループと副大統領を支持するグループが衝突し、内戦が始まってしまった。
 長く戦闘が続いたせいで農業ができなくなり、国民が食べる食料が大幅に不足。約1200万人の国民の約4割にあたる500万人弱の人々が十分に食事ができない状態になっており、今は約110万人の子どもたちが深刻な栄養失調に陥っている。
 ジュバの病院で働くフィリックス・ニャンゴラ医師は「ここ数カ月で、運び込まれてくる栄養失調の子どもたちがどんどん増えている」と訴えている。

親・兄弟亡くした子も、100万人以上の子が国外に脱出

日本に何ができるか、考え続けるべき

 内戦で最も影響を受けるのは、力の弱い子どもたちだ。ジュバの避難民キャンプにある「希望学校」では児童数約3千人のうち、135人が戦闘などで両親または片方の親を亡くしている。
 15歳のアンナ・オジョクさんは昨年7月、自宅が襲われ、両親と兄弟6人を殺された。「これ以上、私のような子どもをつくらないために、私はこの国の大統領になって平和な国をつくりたい」と話した。すでに100万人以上の子どもたちがせんを逃れて、隣の国などに脱出している。
 日本の自衛隊は12年から南スーダンの復興を後押しするためにジュバに派遣され、道路整備や戦闘で家を失った人たちの居住区の整備などを担当してきた。
 しかし、日本政府は今年3月、「自衛隊が担当する施設整備は一定の区切りをつけることができると判断した」として撤収を発表。5月末には南スーダンから完全に引きあげた。現地では「日本は南スーダンのためによく努力してくれた」と感謝する人がいる一方で、「戦争は今も続いている。もっと活躍してほしかった」と残念がる人たちもいる。
 南スーダンでは、今なお多くの子どもたちが殺されたり、おなかをすかせながら隣の国に脱出したりしている。自衛隊が撤退した後も、新聞やテレビなどで現実を知り、国際社会の一員として日本に何ができるのか、考え続けることをやめないでほしい。

体重計につり下げられた1歳3カ月の子どもの写真
病院での診察のため、体重計につり下げられた1歳3カ月の子ども。
栄養失調で腕と脚がやせ細っていた

国内避難民保護区の写真
国連の保護下にある国内避難民保護区。無数のテントが並んでいた
=どちらも5月、南スーダン・ジュバ

南スーダンの地図
どれも(C)朝日新聞社

三浦英之支局長の写真
解説者
うらひでゆき
朝日新聞ヨハネスブルク支局長

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