朝日中高生新聞
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教育の手本にならない文科省からの「天下り」

2017年2月19日付

 文部科学省をめぐる「天下り」が問題になっている。天下りとは、役所の職員が企業や大学などに再就職することだが、文科省は法律を破ったり、違法にならない方法で悪いことができるようにする仕組みをつくったりしていた。調査にうそをついていたことも厳しく批判されている。

慎重さが求められる官僚ら公務員の再就職

不正な認可や予算誘導につながる危険

 「天下り」はもともと、神が天から地上に降りてくることを言う。「かんそんみん」という言葉に代表されるように、民間企業より官庁の方が上であるかのような風潮から、定年などで官庁や役所を辞めた官僚ら公務員が、民間企業などに再就職することをこう呼んだ。
 再就職自体に問題があるわけではない。しかし、中央官庁や地方の県庁など公務員の再就職は慎重でなくてはいけない。
 公務員はさまざまなことがらを認可したり、許可したりするほか、予算を配分するなど幅広い権限を持つ。
 公務員がこうした役所の影響力を背景に民間企業などに再就職すれば、問題が起こりうる。その企業などのために、出身の役所に働きかけて不正に何かを認めさせたり、必要がないのに予算配分を誘導したりできるのだ。これでは、行政のあり方が不透明になり、税金の使い方がゆがむ可能性がある。
 これまでも、防衛省や国土交通省から民間企業に再就職した職員をめぐり、今回と同じような問題が起きてきた。

法に違反して大学と直接やりとり、監視委の調査に関与を否定

元職員使い、違法逃れの仕組みづくり

 今回の文科省の天下りは何が問題になっているのか。主に二つある。
 一つは、国家公務員法に違反し、文科省人事課が早稲田大学と直接やりとりし、元高等教育局長を早稲田大学に再就職させたことだ。役所に許認可や予算を握られている企業や大学にすれば、役所の職員から直接、「この人を再就職させてほしい」と言われると断りにくい。だから、こうした行為は禁止されている。
 しかも、文科省は内閣府の「再就職等監視委員会」の調査に対し、元局長の再就職に関わっていないとうそをついたうえ、早稲田大学にも口裏を合わせるように頼んでいた。
 もう一つは、違法にならない方法として、同省を辞めた元職員を利用していたことだ。元職員が再就職したい人と再就職先の大学などを結びつける役割を担ったり、文科省がその元職員に省内の人事情報を伝えたりして、こうした仕組みを事実上支えていた。監視委員会はこの行為も問題視し、文科省に自ら調査をするよう求めている。
 しんぞう首相は全ての省庁に対して、文科省と同じような事例がないか調査を命じた。
 文科省は日本の教育政策をつくる役所だ。それだけに、法律違反に自ら手を染めたことは子どもたちへの影響という点でも大問題だ。せめて、洗いざらい調査して正直にその結果を国民に報告し、二度とこうした問題を起こさないようにしてほしい。

衆議院予算委員会に出席する嶋貫和男氏と前川喜平・同省前事務次官の写真
衆議院予算委員会で答弁するために挙手する文科省人事課OBの嶋貫和男氏(左)。右は前川喜平・同省前事務次官。2人とも、問題視された文科省をめぐる「天下り」に関わっていた=2月7日

松野博一文部科学大臣の写真

天下り問題について記者会見して説明する松野博一・文部科学大臣=2月6日、文部科学省
どちらも(C)朝日新聞社

西山公隆解説者
解説者
西にしやまきみたか
朝日新聞東京本社
社会部次長

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