朝日中高生新聞
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PKOの自衛隊に新任務「駆けつけ警護」

2016年11月20日付

 日本政府は、アフリカ中部にある南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している自衛隊に対して「駆けつけ警護」という新しい任務を与えた。現地で活動するNGO職員たちが襲われたら、武器を持って助けに向かう。だが、「危険」との声もある。

国際平和協力法に基づき紛争国の立ち直りを支援

南スーダンで道路づくりなどの活動中

 国連平和維持活動とは、英語で「United Nations Peacekeeping Operat‐ions」といい、略して「PKO」と呼ぶ。どんな活動かというと、世界で紛争が起きたら国際連合(国連)が衝突した勢力の間に立って、きちんと戦争をやめているか、軍隊が現場からいなくなるかなどを監視する。このほか、道路をつくったり、病気になった人を治したりと仕事の中身はいろいろだ。こうやって紛争をした国が立ち直るのを助けている。
 自衛隊は1992年に国際平和協力法(PKO法)ができ、カンボジアのPKOに初めて参加した。その後はネパールやシリア南西部のゴラン高原などで参加してきた。
 現在、自衛隊は南スーダンのPKOに参加している。この国は、2011年に独立した世界で一番若い国だ。国内の道路や水道設備が十分ではない。このため、日本や中国、韓国、インドやエチオピアなど世界62カ国もの国が参加して助けている。
 自衛隊は12年から参加しており、今は陸上自衛隊の約350人が活動中だ。「施設部隊」といって、首都のジュバで道路をつくったり、避難民用のトイレを設置したりしている。日本の得意分野だ。

襲われた国連・NGO職員たちを助けに行く仕事が、12月から可能

治安悪く「危険」の声も、注視する必要

 12月から活動する新しい部隊は、新任務「駆けつけ警護」ができるようになる。これは部隊のいる場所から離れた所で活動する国連やNGOの職員たちが襲われた場合、助けに向かう任務だ。現場に向かう途中、邪魔をする人がいれば、銃を空に向けて撃つなどして警告できる。
 今まで駆けつけ警護は認められていなかった。武器を使っていいのは、その本人や近くにいる仲間を守る場合に限られていた。ただ、今回も実際に相手の体に銃を撃つことは、相手が撃ってきた場合などに限られる。
 今回、駆けつけ警護のほかに、「共同防護」も認められた。これはPKOに参加している外国軍の人と協力して、自衛隊が生活している宿営地を武器を持って守る。
 駆けつけ警護も共同防護も、昨年成立した安全保障関連法で新しく認められた。しかし、南スーダンは今も治安が悪いため、「自衛隊員が紛争に巻き込まれて命を落とすのではないか」という不安の声もある。今年7月には大きな戦いが起き、大勢の市民が死亡したばかりだ。
 このため、政府は自衛隊が駆けつけ警護できる範囲をジュバとその周辺に限った。これからも危なくないかどうか、チェックしていくと言っている。遠く離れた国のことでも、みんなが関心を持って見守っていくことが求められている。

国連施設内で、カンボジアPKO部隊の病院職員施設建設を支援する陸上自衛隊のPKO派遣部隊の写真
国連施設内で、カンボジアPKO部隊の病院職員施設建設を支援する陸上自衛隊のPKO派遣部隊=1日、南スーダン・ジュバ
どちらも(C)朝日新聞社

南スーダンの地図

相原亮さんの写真
解説者
あいばらりょう
朝日新聞政治部記者

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