朝日中高生新聞
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OPEC、原油減産に8年ぶり合意

2016年10月23日付

 中東などの産油国でつくる石油輸出国機構(OPEC)が9月、約8年ぶりに原油の生産量を減らす方針で合意した。OPEC加盟国は、世界の生産量の4割近くを占める。実際に生産を減らすことになれば、原油の価格が上がり、日本にも影響が及びそうだ。

米のシェールオイルで生産増も、中国など消費低迷でだぶつく

2年で半値以下、価格下落に危機感

 1960年設立のOPECは、産油国がどれぐらい原油を生産するかを話し合っている。生産量が世界各国で使われる分より多ければ、原油が余るので、価格は安くなる。逆に、少なければ高くなる。OPECの決定は、世界の原油価格に影響を与えるので、注目されている。
 OPECは9月28日、アルジェリアで開いた会合で、加盟14カ国全体の生産量を1日あたり3250万バレル~3300万バレルにすることで合意した。
 バレルは英語で「たる」の意味で、1バレルは約159リットルだ。8月の14カ国全体の生産量は1日あたり3324万バレルだったので、最大70万バレルほど減らすことになる。減産の決定は、金融危機で世界の原油の需要が大きく落ち込んだ2008年12月以来となった。
 原油価格が大きく落ち、原油を売ってお金を稼ぐ産油国にとって厳しい状況が続いていることが理由だ。原油取引の国際指標となる米国産WTI原油の先物価格は、14年7月に1バレル=100ドルを割り込み、今年2月に一時1バレル=26.05ドルまで下がった。今回、減産で合意する直前も1バレル=45ドル前後だった。
 価格が下がった背景には、米国で地下の岩盤に閉じ込められている「シェールオイル」を取り出せるようになって生産が増えた一方、中国などの新興国で消費が思うほど伸びず、原油がだぶついたことがある。

11月末の総会で国別の減産目標に合意できるかが鍵

実行なら輸入する日本にも影響

 OPECはここ数年、原油価格が下がっても生産を増やしてきた。一部の加盟国が、シェールオイルの生産を増やす米国に顧客を奪われるのをおそれたからだ。財政が厳しい国から、生産を減らそうという声が出ても、合意できなかった。
 サウジアラビアとイランの政治対立も影を落とした。イランは核開発疑惑で欧米諸国から経済制裁を受け、原油の生産が減った。1月に制裁が解除され、生産を増やしている最中で、減らしたくない。サウジは、イランを含む主要産油国が合意に参加する必要があると訴えてきた。
 しかし、原油価格の下落でサウジの財政も悪化。9月の会合では態度を変え、イランなどに増産を認める方針を示したことで、イラン側も受け入れた。
 今後の焦点は、減産合意を行動に移せるかだ。OPECは全体の生産量の上限を決めたが、各国がどれだけ減らすかは決めていないので、「絵に描いたもち」になりかねない。OPECは11月30日の総会で、国別の目標について話し合う。
 国別の目標で合意できれば、原油価格は上がりそうだ。原油を輸入する日本では、ガソリン価格や電気・ガス料金、石油を原料にした日用品が高くなるといった影響が予想される。

米国産WTI原油の先物価格の動きのグラフ

OPECの会合に出席する産油国の閣僚らが集まっている様子の写真
OPECの会合に出席する産油国の閣僚ら=9月28日、アルジェリアの首都アルジェ
(C)朝日新聞社

寺西和男さんの写真

解説者
てら西にしかず
朝日新聞
ヨーロッパ総局

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