朝日中高生新聞
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バングラデシュでISのテロ

2016年7月24日付

 バングラデシュの首都ダッカで7月1日夜、武装した男たちがレストランを襲い、立てこもる事件が起きた。治安部隊が突入したが、日本人7人を含む22人が死亡。イスラム過激派「イスラム国(IS)」のバングラデシュ支部を名乗る犯行声明が出た。

親日国で日本人7人が犠牲に

過激派には非イスラム教徒はすべて敵

 レストラン「ホーリー・アルティザン・ベーカリー」に、銃や刃物で武装した5人の男たちがなだれ込んだのは、1日午後8時45分ごろのことだった。
 5人の襲撃犯は、日本人7人と警官2人を含む22人を次々と殺害し、立てこもった。治安部隊は翌朝、突入して襲撃犯全員を射殺した。
 殺された日本人7人は日本が援助する鉄道建設事業のために現地にいた。バングラデシュのために働いていた人々が、なぜ犠牲となったのか。
 犯行声明を出したのは国際的なイスラム過激派「イスラム国(IS)」だった。ISはイスラム教の中でも特殊な解釈に基づき、イスラムに基づいた国をつくれば世界は良くなると信じている。
 世界を味方と敵に二分し、「目的が神の教えに沿っているのだから自分たちは100%正しく、敵を殺すことすら許される」と信じ、中東や欧州などで多くの人々を殺してきた。
 バングラデシュでは一般的に人々の日本人への親近感は高い。だが、世界を敵・味方に二分する過激派は、「日本人=非イスラム教徒=敵」と考えるのだ。

実行犯は高い教育を受けた富裕層の若者

純粋さにつけ込み過激思想を吹き込む

 今回の事件の特徴は実行犯たちが若く、ダッカの富裕層の息子たちも含まれていた点だ。豊かで高い教育を受けた若者の間にも過激思想が入り込んでいることが浮き彫りとなった。
 元留学生ニブラス・イスラム(20)、予備校生ミール・サメフ・ムバシール(18)、大学生ロハン・イムティヤズ(20)の3容疑者は、ダッカの同じ名門私立高校の出身。数カ月前に姿を消したという共通点がある。ミール、ロハン両容疑者の父親は事件後、「息子が過激派に入っているなんて思いもしなかった」と口をそろえた。
 イスラム教徒は、すべてのイスラム教徒は国の枠を超えて仲間だと信じている。一方、イラクやシリア、アフガニスタンなどのイスラム圏では内戦や空爆などにより連日、多くのイスラム教徒が命を落としているという現実がある。
 こうした情報を目にして怒りを募らせる純粋な若者に過激派が近づき、「イスラム教徒を守るために異教徒を殺さなければならない」とささやいて洗脳する。欧州などでは、こうした形でISに引き寄せられる若者がいる。バングラデシュでも、同じような動きが始まっている可能性がある。

襲撃テロの現場となったレストランの写真
襲撃テロの現場となったレストラン。1階には机や椅子が散乱し、2階の窓は割れていた=8日午後7時48分、ダッカ 

イスラム過激派と実行犯グループの図
どちらも(C)朝日新聞社

貫洞欣寛さんの写真
解説者
かんどうよしひろ
朝日新聞
ニューデリー支局長

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