朝日中高生新聞
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アベノミクスの是非が参院選の争点に

2016年7月3日付

 7月10日投開票の参議院選挙で、経済政策「アベノミクス」の是非をめぐって、与野党の主張が真っ向から対立している。第2次安倍政権が「この道しかない」と取り組んで3年半。景気は本当に良くなっているのか。その評価が問われている。

「3本の矢」で経済好循環のシナリオ

首相は雇用環境改善などの成果を強調

 「アベノミクスをもっと加速するのか、後戻りするのか。これが参院選の最大の争点だ」。しんぞう首相は6月初旬の記者会見でこう強調した。
 アベノミクスは、①大胆な金融緩和②機動的な財政出動③成長戦略、という「3本の矢」からなる経済政策だ。
 市場に出回るお金を大量に増やして企業の投資を促し、公共事業などで景気を下支えしながら、規制緩和などで経済成長を図る。企業をもうけさせることで雇用や賃金が改善し、景気回復につなげる――。そんな「経済の好循環」のシナリオを政権は描いた。
 実際はどうなったか。安倍首相が成果としてまず強調するのが、雇用環境の改善だ。有効求人倍率は1.34倍(4月)と高水準になり、「47都道府県すべてで1倍を超えたのは史上初めて」と訴える。
 金融緩和の効果で円安・株高となり、2015年の企業収益は過去最高の70兆8千億円に上った。こうした状況を受け、「16年度の税収は12年度と比べて21兆円増える見込み」としている。

世論調査では「成功」「失敗」の評価真っ二つ

野党は実質賃金低迷や「格差」を批判

 「国民の8割が景気回復を実感していない。いつまで待ったら良くなるのか」
 民進党のおかかつ代表は街頭演説でこう訴えた。
 民進党など野党が、アベノミクスを「失敗」とみる根拠の一つが実質賃金の低迷だ。実質賃金は物価の上昇、下落の影響を除いたもの。15年度は5年連続でマイナスだった。
 消費税が14年4月に5%から8%に引き上げられた影響などで、物価が上昇するなか、賃金の伸びが追いつかず、暮らしが上向いていないためだ。実際、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費は伸び悩んでいる。
 また、仕事に就く人数が増えても、「質」が伴っていないとの指摘もある。実際、非正規雇用は全体の4割超に増えた。大企業が積み上げた内部留保が300兆円を超えたとして、共産党は「アベノミクスは『一握りの超富裕層』と『99%の国民』の間に格差を生み、貧困を広げている」と批判している。
 「道半ばだが、アベノミクスは確実に結果を生み出している」。安倍首相は繰り返し理解を求めている。
 朝日新聞が6月に実施した世論調査では、アベノミクスについて「成功」「失敗」と答えた人はいずれも46%となり、評価は割れている。

大阪取引所の写真
日経平均株価が一時2万円を超えたことも=2015年4月10日、大阪市中央区の大阪取引所

アベノミクスで日本経済はどう変わった?の表
どちらも(C)朝日新聞社

中村靖三郎さんの写真

解説者
中村靖三郎なかむらやすさぶろう
朝日新聞経済部記者

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