朝日中高生新聞
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安倍政治に審判、参院選スタート

2016年6月26日付

 3年に1度、半数ずつ改選される参議院選挙が22日に公示され、経済や社会保障、憲法・安全保障などをめぐって論戦が始まった。投開票は7月10日。しんぞう首相が主導する政治を加速するか、ブレーキをかけるか。今回の参院選がもつ大きな意味は、そこにある。

「アベノミクスは正しい道か」が最大の争点

消費税率引き上げ延期で社会保障は?

 安倍首相は「日本を4年前のあの混迷の時代に後戻りさせてはならない」と訴え、民主党政権時代を批判しながら支持を訴える。
 ポイントは、経済と社会保障、憲法と安全保障をめぐる対決だろう。
 安倍政権が掲げる最大の争点は経済。金融緩和、財政出動、成長戦略のアベノミクス「3本の矢」は、日本経済にとって正しい道筋なのか、どうか。
 安倍首相は、アベノミクスについて「道半ば」としながら「アベノミクスのエンジンを最大限にふかしていく」と訴える。来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げは2年半延期すると表明した。
 だが、消費税率引き上げは、首相自身が「延期しない」と断言していた。民進党など野党側は、こういう状況になったのは「アベノミクスの失敗だ」と批判を強める。
 消費税による税収増が見込めない中で、どのように社会保障を充実させるのかも論点となる。少子高齢化が進む中、医療や介護、子育ての不安、貧困、格差の拡大など、課題は山積みだ。
 自民党は経済の「成長」を強調し、アベノミクスの成果をあてると主張。民進党は行財政改革の推進を訴え、どちらかと言えば「分配」を重視している。
 日本の財政は1千兆円超の借金を抱えて、先進国で最悪の水準だ。財政再建は差し迫った課題であり、どの政策を実現し、どの政策はあきらめるのかも考えなければならない。

「憲法と安全保障」で日本政治の分かれ道

4野党「1人区共闘」で改憲勢力に対抗

 憲法や安全保障については、この選挙結果が今後の日本政治の分かれ道となるかもしれない。
 自民党など早期の憲法改正に前向きな「改憲勢力」が3分の2の議席を獲得すれば、衆参両院でそれぞれ3分の2以上と定められている改憲の発議に手が届く。慎重だったり、反対だったりする野党は、これを阻もうとしている。
 憲法が権力をしばるのが立憲主義だが、安保法制の成立過程で、安倍政権は非立憲的と批判された。
 こうした改憲勢力に対抗するため、民進、共産など4党は全国の1人区で「野党共闘」を実現した。これは昨年秋に成立した安保法制がきっかけだった。学者や学生らが参加した「市民連合」が原動力となり、「安倍1強」政治に対抗しようとしている。
 この選挙から18歳選挙権が導入され、18、19歳の240万人が新たに投票できるようになる。様々な政策課題で将来を担う若者たちがどう考えるのか。大きな注目点となる。

国会議事堂の写真
国会議事堂に向かって右側が参議院

有権者達の写真
22日の参院選公示日に候補者の第一声を聞く有権者たち=大阪市内(C)朝日新聞社

小村田義之さんの写真
解説者
むらよしゆき
朝日新聞論説委員

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