- 日曜日発行/20~24ページ
- 月ぎめ967円(税込み)
←2020年3月16日以前からクレジット決済で現在も購読中の方のログインはこちら
2016年6月26日付
3年に1度、半数ずつ改選される参議院選挙が22日に公示され、経済や社会保障、憲法・安全保障などをめぐって論戦が始まった。投開票は7月10日。安倍晋三首相が主導する政治を加速するか、ブレーキをかけるか。今回の参院選がもつ大きな意味は、そこにある。
安倍首相は「日本を4年前のあの混迷の時代に後戻りさせてはならない」と訴え、民主党政権時代を批判しながら支持を訴える。
ポイントは、経済と社会保障、憲法と安全保障をめぐる対決だろう。
安倍政権が掲げる最大の争点は経済。金融緩和、財政出動、成長戦略のアベノミクス「3本の矢」は、日本経済にとって正しい道筋なのか、どうか。
安倍首相は、アベノミクスについて「道半ば」としながら「アベノミクスのエンジンを最大限にふかしていく」と訴える。来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げは2年半延期すると表明した。
だが、消費税率引き上げは、首相自身が「延期しない」と断言していた。民進党など野党側は、こういう状況になったのは「アベノミクスの失敗だ」と批判を強める。
消費税による税収増が見込めない中で、どのように社会保障を充実させるのかも論点となる。少子高齢化が進む中、医療や介護、子育ての不安、貧困、格差の拡大など、課題は山積みだ。
自民党は経済の「成長」を強調し、アベノミクスの成果をあてると主張。民進党は行財政改革の推進を訴え、どちらかと言えば「分配」を重視している。
日本の財政は1千兆円超の借金を抱えて、先進国で最悪の水準だ。財政再建は差し迫った課題であり、どの政策を実現し、どの政策はあきらめるのかも考えなければならない。
憲法や安全保障については、この選挙結果が今後の日本政治の分かれ道となるかもしれない。
自民党など早期の憲法改正に前向きな「改憲勢力」が3分の2の議席を獲得すれば、衆参両院でそれぞれ3分の2以上と定められている改憲の発議に手が届く。慎重だったり、反対だったりする野党は、これを阻もうとしている。
憲法が権力をしばるのが立憲主義だが、安保法制の成立過程で、安倍政権は非立憲的と批判された。
こうした改憲勢力に対抗するため、民進、共産など4党は全国の1人区で「野党共闘」を実現した。これは昨年秋に成立した安保法制がきっかけだった。学者や学生らが参加した「市民連合」が原動力となり、「安倍1強」政治に対抗しようとしている。
この選挙から18歳選挙権が導入され、18、19歳の240万人が新たに投票できるようになる。様々な政策課題で将来を担う若者たちがどう考えるのか。大きな注目点となる。
国会議事堂に向かって右側が参議院
22日の参院選公示日に候補者の第一声を聞く有権者たち=大阪市内(C)朝日新聞社
解説者
小村田義之
朝日新聞論説委員
記事の一部は朝日新聞社の提供です。