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2015年10月11日付
集団的自衛権を行使できるようになる安全保障関連法(安保法)が9月19日、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決し、成立した。戦後日本の安全保障政策の歴史的転換となる。憲法違反との批判が根強い中、海外での武力行使に扉が開かれた。自衛隊の活動は、どう変わるか。
安保法は、以前からある自衛隊法など10本の改正を束ねた「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる新たな恒久法「国際平和支援法」の2本立て。「日本の平和と安全」に関するものと「世界の平和と安全」に関係するものに分かれる。
「日本の平和と安全」では、安倍政権が憲法解釈を変えて、集団的自衛権の行使ができるようになったのが柱だ。従来の政府解釈は、日本が「自衛の措置」として武力の行使ができるのは、直接攻撃を受けた場合に限ってきた。しかし、密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされたり、国民の生命に明白な危険があったりする場合に集団的自衛権を認めたものだ。
「世界の平和と安全」では、戦闘中の他国軍を、いつでも自衛隊が戦闘現場以外なら後方支援できる。例えば、戦闘へ向かう他国軍の戦闘機に洋上や空中で給油ができる。武器や弾薬の輸送も可能だ。
日常でも、日米が協力して、北朝鮮の弾道ミサイル警戒や中国軍の活動の情報収集などに当たっている場合、自衛隊が米軍の艦船などを守ることができるようになる。海外にいる日本人が武装集団に襲われた時、相手国の同意があれば救出に向かうこともできる。
国連平和維持活動(PKO)での自衛隊活動も広がる。離れた場所で武装集団に襲われた他国軍や民間人を助けに向かう「駆けつけ警護」ができる。自衛隊員が武器を持って巡回や検問といった地元住民を守る活動にも参加できる。
こうした活動を行うための武器の使用基準が緩められた。従来は、自分や周りにいる人が襲われた場合の「正当防衛」に限られていたが、仕事を妨げる武装集団を排除するために武器が使える。駆けつけ警護の仕事は、自衛隊が唯一派遣しているアフリカ・南スーダンPKOに適用する方針だ。
安保法は9月30日に公布された。来年3月末までに施行される。このため、防衛省は施行までに、自衛隊が武器を使うときの基準を定める部隊行動基準を見直す。訓練計画も作り、準備を進める。
一方、安保法は憲法学者や元最高裁長官、歴代内閣法制局長官らが「違憲」と主張。各地で提訴に向けた動きが相次いでいる。安倍首相は9月25日の記者会見で「時を経る中で、国民的な理解が広がっていくと確信している」と自信を見せた。しかし、違憲だとの指摘が多い法律のあり方をめぐる議論は続きそうだ。
法案成立がせまる国会前にはおおぜいの市民が集まった=9月18日、東京都千代田区永田町
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
二階堂勇
朝日新聞政治部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。