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2015年8月30日付
地球温暖化問題について各国の代表らが話し合う会議が、年末にパリで開かれる。温室効果ガスをどう削減して、深刻化する温暖化に立ち向かうか。会議では、2020年以降の対策で合意を目指しており、地球の将来を占う上で特に重要だと注目されている。
会議は国連の気候変動枠組み条約締約国会議。「COP」の通称で知られている。毎年末に開かれ、条約を受け入れた世界190余りの国や地域の代表が集まる。パリの会議は21回目なので「COP21」となる。
条約の下、1997年に京都で開かれたCOP3で採択された最初の温暖化対策の枠組みが「京都議定書」。枠組みとは、温暖化対策を進める上でのルールや約束などの仕組みのことだ。当時は、世界全体の温室効果ガス排出量の6割を先進国が占めた。このため、先進国のみが削減の義務を負った。
その後、中国やブラジルなどが経済発展を遂げ、途上国からの排出量が逆転。世界1位の排出国も米国から中国に変わった。途上国の排出量は、今後も増え続ける恐れがある。
このように、世界中が力を合わせて対策に取り組む必要が出てきたことに加え、先進国からも「自分たちだけが削減の義務があるのは公平ではない」という不満も強まった。
京都議定書は2020年で終わる。それに次ぐ新しい枠組みには全ての国が参加して、今度こそ効果のある温暖化防止につながることが期待されている。
だが、話し合いは難航している。歴史的に大量の温室効果ガスを排出してきた先進国と、経済成長はこれからの途上国の間で責任のバランスをどう取るのか、各国にどこまで厳しく目標を守らせられるかなど、意見が激しく対立する論点が少なくない。
成功のカギとなるのは、2国で世界の排出量の4割を占める米中の動きだ。
01年に京都議定書から脱退するなど、世界を失望させたこともあった米国は、最近は、オバマ大統領の下、温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電所に厳しい排出規制をかけるなど、積極的な姿勢を見せている。
また、温暖化対策の責任を負うことに極めて後ろ向きだった中国も、6月末に削減目標を発表した。
新しい枠組みは、全ての国が、それぞれ自主的に決めた対策の目標を出し合って全体をつくることになっている。
日本も7月、30年度までに13年度に比べて温室効果ガスを26%減らすという目標を決めて国連に提出した。他の先進国、途上国が相次いで削減目標を出しており、COP21の開かれる年末に向けて、合意への期待が高まっている。
【京都議定書の枠組み】
・温室効果ガスの削減義務は先進国が負う
・議定書で各国の削減の数値目標を設定
・国外での削減の一部を国内分にカウントできる仕組み
【新たな枠組み】
・途上国も含めた全ての国が参加
・温室効果ガスの削減目標は各国が自主的に設定
・議論のベースとなる案が7月に発表
温室効果ガス削減目標の進み具合について各国の質問に答える日本政府代表=6月4日、ドイツ・ボン
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
小坪遊
朝日新聞科学医療部
記事の一部は朝日新聞社の提供です。