朝日中高生新聞
  • 日曜日発行/20~24ページ
  • 月ぎめ967(税込み)

NEWS WATCHER

「女性リーダーを3割」目標先送りに

2020年8月30日付

 2020年までに女性のリーダーを30%程度まで増やそうという政府の目標が先送りされた。政治や経済の分野で女性リーダーは1割程度しかいない。性別にとらわれずに能力や個性を発揮できる「ジェンダー平等」な社会にするには、どうしたらいいのだろうか。

「候補者男女均等法」「女性活躍推進法」あるが…

現状は1割ほど 海外に遅れる日本

 先送りされたのは、「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%程度にする」という政府の目標だ。政治家や会社の管理職や役員といった、ものごとの決定権を持つ立場に女性を増やす狙いで国が03年に作ったが、17年たっても達成できなかった。
 7月にあった政府の会議は、代わりに「20年代の可能な限り早期」に「30%程度を目指す」という目標案を提示した。
 女性の割合は、衆議院議員も民間企業の管理職も、どちらも1割ほど。他の先進国は3~4割に達している。日本も加盟する国連は30年までに「完全で効果的な女性の参画と平等なリーダーシップの機会の確保」を目指しており、多くの国が男女平等の取り組みを加速している。どんどん日本が取り残されている状態だ。
 日本が何もしていないわけではなく、選挙の候補者をなるべく男女同じ数にするよう求める「候補者男女均等法」や、企業などに女性を増やすための数値目標作りを義務づける「女性活躍推進法」はある。ただし、取り組まなくても罰則はなく、効果は小さい。

「男は仕事、女は家事」根強い役割意識

性別などにとらわれない社会を

 なぜ女性リーダーが増えないのか。日本では「男性は仕事、女性は家事」のように、性別で役割を分ける意識がまだまだ根強い。「女の子なんだから、家事の手伝いをしなさい」と言われたことはないだろうか?
 それが女性が選挙に立候補したり、働き続けたりするときの壁になっている。女性に対する嫌がらせもいまだに多いことも事実だ。
 そもそもなぜ、女性リーダーを増やさないといけないのだろうか。例えば、学校のルールを作る場合、議論に参加できるのが男子だけだったらどうだろう。女子がより良いアイデアを思いついても発言できない。それではルールの質が下がり、みんなにとって不幸だ。それに差別や偏りがある環境は、誰にとっても居心地が悪い。
 社会も同じだ。人口の半分が女性なのだから、政治や経済の分野でも大事なことを決める場には女性が半分いたほうが、みんなが暮らしやすい社会に近づける。ニュージーランドや台湾など、新型コロナウイルスへの対応がうまくいったとされる国や地域には、女性トップが目立つ。
 女性がリーダーになれる国は、性別や人種、宗教などにとらわれず、個人が能力を発揮しやすい環境があるともいえる。だから危機の時にも、より良い対応ができるとみられている。
 海外では女性リーダーが自然に増えるのを待つのではなく、積極的に増やす仕組みがある。
 議員の選挙では120以上の国で、候補者や当選者について「どちらの性も40%を下回らない」などとする法律や政党のルールを設けている。これらは「クオータ制」と呼ばれ、企業の役員に採り入れている国もある。
 フランスでは、候補者を男女同数にすることを定めた「パリテ法」がある。地方議会の選挙も含め、比例区では候補者名簿を男女交互にしなければならない。

■解説者
たかはし
朝日新聞東京本社経済部記者

第4次安倍再改造内閣の閣僚の写真
第4次安倍再改造内閣の閣僚の顔ぶれ=2019年9月、東京都千代田区
(C)朝日新聞社

日本の女性リーダーの割合の推移のグラフと主な先進国の女性リーダーの割合のグラフ
(C)朝日新聞社

関連記事

最新の記事

    記事の一部は朝日新聞社の提供です。

    • 朝学ギフト

    トップへ戻る