朝日中高生新聞
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「海賊版」漫画 ダウンロードが違法に

2020年8月23日付

 インターネットを見てみると、作者に無断で漫画を無料で公開しているサイトがある。「海賊版サイト」と呼ばれているが、来年1月から、こうしたサイトから漫画をスマートフォンなどにダウンロードして保存することが法律で禁じられる。

無断コピーの違法サイト 取り締まっても次々と

作者の権利守る著作権法を改正

 「海賊版」とは、漫画や小説、音楽、映像などのうち、それらをつくった人に無断でコピーして売っていたり、インターネットにのせていたりする作品のことだ。漫画や小説などの作品をつくった人には「著作権」という権利があって、「著作権法」という法律で守られている。他人の作品を勝手にコピーして売ったりすると、この法律に違反することになる。
 いま、インターネットではこうした海賊版を集めた「海賊版サイト」が大きな問題になっている。発売直後の漫画の人気作品が、無料で読めてしまうサイトもある。
 出版業界の団体でつくる出版広報センター(東京都)の調べでは、日本の漫画が読める海賊版サイトの数は、国内外に500以上もあるという。人気がある上位の10サイトでは、日本国内から、月に1億回ものアクセスがあるそうだ。
 無料で読む人が増えると、本や電子書籍は売れなくなる。漫画の作者たちの収入が減ることになれば、次の作品をつくることも難しくなって、私たちも新しい漫画を読めなくなってしまうかもしれない。
 同センターによれば、出版社は「違法に掲載した作品を削除して」と海賊版サイトに繰り返し求めている。警察に訴えて、漫画の海賊版サイトの運営者が逮捕されたこともある。しかし、新しいサイトが次々に出て、なかなか数は減らない。

2010年に映画と音楽について規制

来年1月から漫画や写真、小説も

 映画などの映像と音楽については、2010年に「違法にネットで公開されている」と知ったうえで、パソコンやスマートフォンなどに「ダウンロード」することが違法になった。海賊版によって、つくった人たちが得られるはずだった利益が損なわれる被害が深刻になり、国が法律を変えた。
 12年からは、本来は有料の作品の海賊版をダウンロードして裁判で有罪になったら「2年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその両方)」も科されることになった。
 漫画についても法律が変わり、来年1月からは海賊版をダウンロードすると違法になる。写真や小説、論文なども同じで刑罰もある。ダウンロードを違法にして、海賊版を使う人を減らすねらいがある。
 ただ、国は例外になるケースも示している。友達がSNSに、漫画本のある場面を写真に撮って投稿していた。これをダウンロードしたら違法か、というと必ずしもそうではない場合もある。本が全体で数十ページあって、そのうち1コマ~数コマだけが写っているなら基本的には問題ない。
 社会には、著作権法に反して公開されているものも実は多くて、それを私たちはふだん、いろいろな情報を集めたり新しい表現をつくり出したりするときに、活用している場合もある。新しいルールは、著作権を守ることと、私たちの生活に与える影響とを考えて、つくられた。

■解説者
まるやまひかり
朝日新聞東京本社文化くらし報道部記者

漫画の海賊版の被害を訴える出版広報センターのサイトの画像
漫画の海賊版の被害を訴える出版広報センターのサイト

海賊版ダウンロード規制をまとめた画像
(C)朝日新聞社

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