朝日中高生新聞
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米国の新型宇宙船に野口飛行士が乗船へ

2020年5月24日付

 まもなく米国で、新型宇宙船の打ち上げがある。スペースシャトルの退役以降、途絶えていた宇宙船が9年ぶりに復活する。国際宇宙ステーション(ISS)に飛行士を運ぶテストに成功すれば、次は日本人のぐちそういち飛行士(55)が乗り込む予定だ。

7人乗りのカプセル「クルードラゴン」

タッチパネルで操縦、宇宙服も軽く

 宇宙船は7人乗りのカプセル型で「クルードラゴン」という名前だ。大きさは直径4メートル、高さ約8メートルで、大型トラックぐらい。ファルコン9というロケットの先に載せて打ち上げられ、高度400キロを回るISSに向かう。
 スペースシャトルは飛行機のように滑空して着陸したが、この宇宙船は翼はなく、パラシュートで海に着水する。機体は何度も再利用できる。
 これまでの宇宙船に比べ、操縦はとても簡単になった。シャトルでは操縦席に3千もあったスイッチが激減して、操作はタッチパネル式に。人が操作していたISSへのドッキングも自動だ。野口さんは「黒電話がスマートフォンに変わった感じ」と驚いている。
 内装も白と黒に統一され、宇宙服も軽くなった。ヘルメットも飛行士に合うよう3Dプリント製だ。
 開発は順調だったとは言えない。米宇宙ベンチャー「スペースX」が米航空宇宙局(NASA)から依頼され、2014年からつくり始めた。ISSへ物資を運んでいる補給船「ドラゴン」をベースにしたが、試験中に爆発するトラブルもあり、安全性を高めるため、開発は約3年遅れた。昨年3月に無人のテスト飛行に成功し、ようやく完成した。

米国の有人飛行、9年ぶりの悲願

テスト飛行後、本番は今年後半にも

 米国の有人飛行は久しぶりだ。半世紀前の「アポロ計画」で人類初の月着陸をした米国は、1980年代からスペースシャトルでISSの建設など宇宙開発を引っ張ってきた。
 だが、シャトルは2度の事故で14人が犠牲になり、2011年に退役。以降、自前の宇宙船がない米国は、ロシアのソユーズ宇宙船に1席あたり8千万ドル(約90億円)もかけて乗せてもらっていた。自国の宇宙船を持つことは、再び月の有人探査をめざす米国にとって悲願だった。
 野口さんは今回、宇宙船のハッチの開閉や緊急時に脱出する対応を任されている。操縦は、一緒に乗り込む米国人の担当だ。
 これまで2回宇宙に行った野口さんにとって、シャトル、ソユーズに続く3機目の宇宙船。「学ぶことは多いが、最先端の技術を見ることができて勉強になるし、挑戦に参加できてうれしい」と話している。半年間滞在するISSでは、科学実験などをする予定だ。
 宇宙船はまず、5月28日(日本時間)、米国の飛行士2人を乗せてテスト飛行に挑む。野口さんが乗るのは、その次の本番の飛行の初回だ。順調なら今年後半の予定だ。一緒に乗り込む3人は米国の飛行士で、野口さんは米国以外の飛行士としては初めてになる。
 新型コロナウイルスの影響も心配されるが、野口さんは「一日一日、今すべきことをしっかりやっていく」と意気込んでいる。現役の日本人飛行士では最年長の野口さんに頑張ってほしい。

解説者
いしくらてつ
朝日新聞東京本社科学医療部記者

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