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2020年4月26日付
「スーパーシティ」と呼ばれる「未来都市」の実現を政府が目指している。AI(人工知能)やビッグデータといった最先端の技術を活用した街づくりを目指す取り組みだが、個人情報の取り扱いをめぐって懸念の声もあがっている。
自動車の自動走行や支払いの完全キャッシュレス化、ドローンを使った自動配送、遠隔医療、遠隔教育……。「スーパーシティ」構想とは、こうした最先端技術を活用した未来都市をつくる構想のことだ。政府はこの構想を盛り込んだ法律の改正案の、今国会での成立を目指している。今年の夏にも自治体などからの募集を始め、秋にはスーパーシティに指定する区域を選定したい考えだ。
これまでも「スマートシティ」と呼ばれる最先端技術を使った街づくりは進められてきた。スーパーシティ構想では、最先端の技術を導入するために必要ないくつもの分野にわたる規制改革を一体的に実現しようとするのが特徴だ。
これまでは、担当する省庁とそれぞれ個別に協議や検討が行われていた。ただし、こうしたやり方では、世界各地で最先端技術を生かした都市の開発競争が進められるなかで、スピード感に欠けるという指摘があった。
工場の跡地など、今はなにもない土地に新しくつくる方法と、すでにある都市の一部で必要な再開発をする方法がある。政府が昨年秋にアイデアを公募したところ、50を超える自治体などから提案があった。例えば大阪府と大阪市は、2025年の大阪・関西万博の開催予定地の人工島「夢洲」を含むエリアをスーパーシティにしたい考えを示している。
構想では、「データ連携基盤」(都市OS)と呼ばれるシステムが核になる。このシステムで個人や企業、行政などからさまざまなデータを収集、整理し、サービスに使っていくことになっている。
このため、集められた大量の個人情報を含むデータがきちんと管理されるかという心配がある。海外の先行事例でも、情報が悪用されたり、監視社会につながったりするのではないかという不安が根強くあるのが実情だ。
例えばカナダのトロントでは、IT大手グーグルの関連会社が打ち出した未来都市の開発をめぐって、市民の間から反対の声が上がっている。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大によって、遠隔治療や遠隔教育など、最先端技術を生かした取り組みは今後ますます注目されることになりそうだ。経済界もこうした分野への進出に強い関心を示している。トヨタ自動車とNTTは先月、お互いに約2千億円を出資し、インターネットやITを活用した街づくり事業で連携していくと発表した。
この構想では、計画を出す段階で住民の合意がなくては進めることができない仕組みになっている。最先端の技術を活用してどういう街にしていくのか、丁寧な説明が重要になりそうだ。
解説者
野平悠一
朝日新聞政治部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。