朝日中高生新聞
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ODA日本は4位 他国を支援する理由

2020年4月19日付

 開発が遅れ、貧しさに苦しむ国(途上国)をお金や技術で助ける「ODA(政府の途上国援助)」。日本が支援する金額は世界4位で、かつて1位だったこともある。なぜほかの国を助ける必要があるのだろうか。また、日本はどの国に、どんな支援をしているのだろうか。

世界の4分の3は「途上国」

戦後受けた支援 豊かになり恩返し

 途上国とは、日本や米国などの先進国ほど裕福でなく、経済成長が途中の国のことだ。世界196カ国のうち約150カ国もあり、世界の人口(約74億人)の8割以上が住む。
 1日1.9ドル(約206円)未満で暮らす人は7億人以上いる。家計を支えるために働いているなどの理由で、学校に通えない子どもも約5800万人いる。
 かつて、日本も援助を受ける側だったことがある。75年前、戦争に負けて生活が苦しかったときに、米国や国連児童基金(ユニセフ)の支援を受けて立ち直った。豊かになった今、援助をすることで恩返ししていると言える。
 また、日本の食卓に並ぶ食材の半分以上は輸入品だ。電気をつくるための石油も大半を外国から買っている。外国から欲しいものを手に入れ、貧しい国はそのままとはいかない。
 日本は1954年、第2次世界大戦で被害を与えたアジアの国々を対象に支援を始めた。日本の経済が大きくなると、中東やアフリカ、中南米にも支援が広がった。これまで日本が支援した国・地域の数は190にもなる。
 援助の内容は港や道路の建設から、柔道、野球の指導まで、とても幅広い。南米のチリには、70年代から20年間にわたってサケを養殖する技術を伝えた。すると、チリはサケの輸出大国になった。東南アジアのカンボジアでは2001年、日本の援助でメコン川に大きな橋がかけられ、「きずな橋」と呼ばれている。
 日本の援助額は1989年、米国を抜いて初めて1位になった。93年から8年間、1位だった。しかし、他国が援助額を増やし、2018年は約142億ドル(約1兆5千億円)で、米国、ドイツ、英国に次ぐ4位だ。

戦争目的以外なら他国軍も支援

物資が戦争に使われないか心配も

 日本政府は15年に「開発協力大綱」を決め、ODAの方針を大きく変えた。
 これまでは「戦争を後押しするような使い方を避ける」と定め、他国の軍隊を支援できるかどうかがあいまいだった。新しい大綱は「戦争目的でなければ支援を考える」となり、他国軍を支援できることをはっきりさせた。
 具体的な支援は、災害への対応や海賊を取り締まる船の提供などが考えられる。中国が途上国にたくさんの援助をして存在感を出しているため、対抗するねらいもあるようだ。
 大綱については「日本が提供したものが戦争に使われる」という心配の声もある。世界に信頼され、喜んでもらえる支援のあり方を考えていく必要がある。

解説者
とうたつ
朝日新聞東京本社政治部記者

きずな橋の写真
日本のODAで建設された「きずな橋」=2006年、カンボジア・コンポンチャム
(C)朝日新聞社

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