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2020年2月23日付
学校で起きた問題を先生たちが解決できるように助ける、「スクールロイヤー」と呼ばれる弁護士たちが活躍している。いじめなどの問題が起きたとき、「学校の解決の仕方が悪い」と言われることがあり、弁護士のアドバイスできちんと解決することがねらいだ。
スクールロイヤーは、いじめや事故などが学校で起きたときに問題が解決できるよう助ける弁護士のこと。法律で決まった言い方ではないが、弁護士や学校の先生たちの間で使われている。
主な仕事は、学校が抱える問題について、校長先生たちから頼まれた場合に、法律事務所などで相談に乗ること。その他にも、生徒たちにいじめについて授業をしたり、先生たちに問題を解決する方法を教えたりしている。
スクールロイヤーを導入したことで、学校側は「ちゃんと解決できるか不安なときに、弁護士のアドバイスを受けて、自信を持って対応できるようになった」と言われている。実際に先生たちが「いじめかどうか判断できない」と迷っていたときに、スクールロイヤーの提案でクラス全員にアンケートをしたら、いじめだとわかって解決できたケースもあるそうだ。
全国で最初に始めたのは大阪府だ。2013年度から、大阪弁護士会の中から選ばれたスクールロイヤーに助言などを任せる仕組みを始めた。日本弁護士連合会によると、昨年6月時点で大阪府や三重県、大津市など少なくとも10府県17市がこうした仕組みをとり入れている。文部科学省は新年度から、スクールロイヤーをすべての都道府県の教育委員会などに置くことにしている。
スクールロイヤーが教育現場で求められている背景には、いじめや児童虐待などの問題に対して、教育委員会や学校が「対応が悪かった」と言われるケースが後を絶たないことがある。例えば、千葉県野田市で昨年1月に小学4年(当時)の女児が虐待で死亡したとされる事件では、女児がアンケートで「父親から暴力を受けている」と学校に訴えていたのに、そのことが書かれたコピーの文書を市の教育委員会が父親に渡していて、強い批判を受けた。
スクールロイヤーが先生たちの相談に乗って、法律の知識などを伝えることは、とても大事だ。しかし、そのときに学校や先生の立場だけを優先的に考えてはいけない。子どもと保護者、学校の間に立って問題解決を手助けするんだという意識を、スクールロイヤーがきちんと持つことが大切ではないか。
解説者
米田優人
朝日新聞大阪本社社会部記者
教員らを前に、いじめ防止対策推進法の内容などを説明する弁護士=2019年9月、大阪市
どれも(C)朝日新聞社
当時小学4年の女児が学校のアンケートに書いた、父親からの暴力を訴えている文書=2019年2月
記事の一部は朝日新聞社の提供です。