朝日中高生新聞
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2020年 景気の正念場へ

2020年1月5日付

 日本では景気回復が長く続いている、と言われてきた。しかし、最近はアメリカ(米国)と中国の対立が世界経済の足を引っ張っているほか、国内では、消費税が増税された影響で、消費が冷えこむ心配が出ている。景気はいよいよ正念場を迎えている。

米中の貿易対立や消費税の増税

「緩やかに回復」も、後退の可能性が

 政府は去年1月に「2012年12月に始まった景気拡大が、戦後最も長くなった可能性がある」と発表した。今も「景気は緩やかに回復している」との見方だ。国全体の経済の大きさを測る国内総生産(GDP)の伸び率は、物価の変化の影響を除くと、19年7~9月期まで1年間、プラスが続いている。
 ただ、景気は良くなっているとも言い切れない。景気の弱さを示す統計の数字も目につく。企業の生産は鈍っているし、個人消費も去年10月に消費税が増税された後は弱い状況だ。
 工場での生産や商品の売れ行きなど、9種類の統計をもとにはじき出される景気動向指数は、この1年ほど下がる傾向にある。この指数に基づく景気の判断は、19年3月分で約6年ぶりに「悪化」に陥った。景気後退の可能性が高いことを示している。
 中国経済の勢いに急ブレーキがかかっていることが響いている。米国と中国が貿易のことで対立し、中国の輸出や生産の力が弱まってしまった。中国の工場では日本製の機械や部品がたくさん使われているから、悪影響が日本企業にも広がっている。
 消費税率が上がった影響もある。増税直前の去年9月までは、税金が高くなる前に必要な物を買ってしまおうという「駆け込み」が起きた。でも、増税後にはその反動で、物を買うのを控える動きが広がった。
 政府は、増税の影響を小さくしようと、現金を使わずに買い物すると金額に応じてポイントをもらえるようにするなどの対策をとった。それでも、10月は家計の支出が大きく落ち込んだ。その後だんだん回復していくとみられているが、専門家たちは、去年の10~12月期のGDPは伸び率がマイナスになるだろうと言っている。

東京五輪・パラ後の「第2の崖」

公共工事、中小企業支援など対策も

 今年は夏に東京五輪・パラリンピックがあり、外国からたくさんの人がやってくる。テレビなどの買い替えも広がれば、景気をある程度保つ力になるだろう。
 しかし、問題はその先だ。政府の増税対策には6月で終わるものがあるし、五輪の後は消費の盛り上がりもなくなっていく。増税に続く「第2のがけ」が待ち構えていると言われている。
 政府は去年12月、経済が落ち込む恐れに備えるとして、国や地方の財政から約13兆円を出す大がかりな経済対策をまとめた。公共工事や中小企業への支援など、幅広くお金を使い、景気を支えようとしている。
 ただ、政府の思惑通りに効果が出るかは、はっきりしない。いまは働く人が足りない人手不足の状態で、たくさんの公共工事がスムーズに進むとは思えないからだ。
 なにより、景気が本格的に悪いわけではないのに、これほどの税金を使う必要があるのか、疑問に思う専門家も少なくない。国は1千兆円を超える借金を抱えている。経済対策が税金のむだ遣いになっていないか、チェックしていくことが大事だ。

解説者
たかはし
朝日新聞東京本社経済部記者

「キャッシュレスで5%還元」をうたう表示の写真
「キャッシュレスで5%還元」をうたう表示。期限は今年の6月までとされている=2019年10月、大阪市
(C)朝日新聞社

多くの外国人観光客が訪れる浅草の写真
多くの外国人観光客が訪れる浅草。東京五輪・パラリンピックで観光客の増加がさらに見込まれる=19年12月、東京都台東区、中田美和子撮影

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