朝日中高生新聞
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政府が導入目指す「イージス・アショア」

2019年9月8日付

 日本政府が、陸上配備型げいげきミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を予定している。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を念頭に、防御を固める狙いだ。ただ配備の候補地では、防衛省のずさんな説明に住民らが不信感を募らせている。

対北朝鮮を念頭に、3段構えで切れ目なく守る構想

弾道ミサイルを陸上から迎え撃つ

 イージス・アショアには、飛んでくる弾道ミサイルを大気圏外の宇宙空間で迎え撃つ能力がある。海上のイージス艦に装備されているレーダーや、迎撃ミサイルの発射装置を陸に置くようなシステムだ。2基の導入にかかる経費は、計約2400億円と見積もられている。
 政府は2017年末、北朝鮮のミサイル開発を「差し迫った新たな段階の脅威」として、導入を閣議決定した。18年版の防衛白書によると、北朝鮮は16年に23発、17年に17発の弾道ミサイルを発射している。
 現状の日本の弾道ミサイル防衛は、海上のイージス艦からの迎撃ミサイルと、地上の部隊が発射する地対空誘導弾「PACパック3スリー」からなる。これにイージス・アショアを加えて3段構えにすれば、「切れ目なく守る能力を抜本的に向上できる」(防衛白書)という。いわたけし防衛大臣は「艦船(イージス艦)だと、どうしてもすきが生じる恐れがある」とも説明している。

地図誤用、説明会で居眠り…防衛省がずさんな「適地」報告

配備候補地の住民の不信感高まる

 防衛省は昨年、秋田市のあら演習場と山口県のむつみ演習場をイージス・アショアの配備候補地とし、自治体に理解を求めた。しかし地元からは、レーダーによる電磁波の影響などに不安の声が上がった。それを受け、安全性や他に適した場所がないかを調査。報告書を今年5月に示して、改めて秋田、山口両県が適地だと伝えた。
 だが直後、報告書のずさんさが発覚した。秋田県への報告書では、検討した別の国有地の周囲の山を実際より高く記載し、レーダーがさえぎられるとしていた。デジタル地球儀「グーグルアース」の誤用だったという。その後も不正確な記述が相次いで見つかったり、住民説明会で防衛省の職員が居眠りして批判されたりした。
 たけのりひさ・秋田県知事は「白紙だ」と態度を硬化。7月の参議院議員選挙では秋田選挙区で、配備反対の新顔が自民の現職を破った。
 山口県でも不信感は大きく、候補地のそばの町では、反対団体に有権者の半数が加入する事態となっている。
 防衛省は急きょ、「整備推進本部」を立ち上げて体制を強化し、山の高さを実地調査することも決めた。「十分な説明ができるようにしっかりと準備をした上で、改めて説明に臨みたい」(岩屋防衛大臣)としているが、失った信頼を回復できるか、先行きは不透明だ。

イージス・アショア配備計画のイメージ図
どれも(C)朝日新聞社

配備反対の看板の写真
配備反対の看板=6月22日、山口県阿武町

配備計画をめぐり、佐竹敬久知事(右)に頭を下げる岩屋毅防衛大臣の写真
配備計画をめぐり、佐竹敬久知事(右)に頭を下げる岩屋毅防衛大臣=6月17日、秋田市

解説者
とうよしたか
朝日新聞東京本社社会部記者

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