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2019年6月23日付
プラスチックごみによる海の汚染が問題になり、汚れてリサイクルが難しい廃プラスチック(廃プラ)を輸出入することが、世界中で2021年から規制される。アジア諸国にリサイクルできる「資源」として廃プラを輸出してきた日本も、国内できちんとした処理を真剣に考えなくてはならない。
スイスのジュネーブで5月に開かれたバーゼル条約の国際会議は、汚れた廃プラを条約の規制対象にすることに決めた。ノルウェーが初めに提案し、賛同した日本が共同提案に回り、議論の末に各国で合意した。
バーゼル条約は、有害な廃棄物の国境を越えた移動を規制する国際条約だ。日本も含め180以上の国や地域が批准している。今回の改正で、汚れた廃プラを輸出する際に相手国の同意が必要になるが、同意を得ることは非常に難しい。
廃プラは、リサイクルできる資源として主に先進国から輸出されてきた。ただし、そのなかに、たばこの吸い殻の入ったペットボトルや、食べもので汚れた廃プラが混じっていた。
汚れた廃プラは、受け入れ先の途上国でリサイクルされずに置き去りにされ、海に流れ出すなど環境問題を招いていた。なぜ、廃プラは輸出されていたのか。
日本国内で1年間に出る廃プラの量は約900万トンに上るが、そのすべてを安くリサイクルできるほどの施設が国内にない。これまでは中国や東南アジアに輸出していた。輸出量は1年間に100万トン以上で、日本は米国やドイツなどとともに輸出大国の一つだ。
だが、日本の主な輸出先だった中国は2017年末に「輸入ごみが環境を汚染している」として廃プラの輸入を原則禁止した。次に廃プラは東南アジアに流れ始めたが、マレーシアやタイが輸入禁止や制限を始めている。マレーシアは今年5月、「日米など少なくとも7カ国から違法に持ち込まれた廃プラ450トンが見つかった」と怒りの声を上げた。この450トンは輸出した国に送り返すという。
アジア諸国が輸入禁止を始めると、日本では処理しきれない廃プラが増えて、処理施設の敷地に積み上がるようになってきた。そこで、日本の環境省は緊急策として、お店や会社から出る廃プラを、家庭ごみの焼却場で処理してほしいと、自治体に求めている。本来は別々のルートで回収、処分するもので、異例だ。
バーゼル条約の改正で、汚れた廃プラの輸出が困難になる。まず、私たちの暮らしから出る廃プラは自分の国できちんと処理できる施設を増やさなくてはいけない。
そもそも、処理できないほどのプラスチックを使っていることが問題だ。環境省は来年の東京五輪の前に、レジ袋の有料化を法令で義務づける考えを明らかにしているが、それで減らせるプラスチックの量はわずかだ。私たちの暮らしを広く見直す必要がある。
どれも(C)朝日新聞社
解説者
杉本崇
朝日新聞科学医療部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。