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2019年3月31日付
2月の沖縄県民投票で7割を超える人が、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設計画で名護市辺野古の沿岸部を埋め立てることに「反対」の意思を示した。だが政府は工事を止めようとせず、投開票日翌日も埋め立てを続けた。沖縄の民意は踏みにじられている。
16日、那覇市の公園には続々と人が集まってきた。県民投票を受けて開かれた「土砂投入を許さない! ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める3・16県民大会」。主催者発表で1万人が参加した。
大会では「県民投票で示された圧倒的な民意を尊重し、新基地建設を断念すること」などとする大会決議を採択し、「土砂投入を許さない!」「民意は示された」と書かれたメッセージボードを参加者が一斉に掲げた。
その3日後には玉城デニー知事が上京し、安倍晋三首相と会談。工事を中止するとともに1カ月程度の話し合いの期間を設けるよう訴えた。
沖縄では2月24日に県民投票が実施された。辺野古沿岸部の埋め立てについて「賛成」「反対」「どちらでもない」から選ぶ方式だった。投票率は52.48%と50%を超え、「反対」が有効投票数の72.15%を占めた。「反対」の票数は43万票超で、昨年9月の知事選で、玉城デニー氏が獲得した過去最多の39万票を大きく上回った。
だが、政府は沖縄の民意をかえりみようとしない。
岩屋毅防衛相は国会の参院予算委員会で、県民投票の翌日も土砂投入が行われたことについて「あらかじめ事業の継続は決めていた」と答え、県民投票の結果にかかわらず、工事を続ける方針だったことを明かした。安倍首相も「危険な状況にある米軍普天間基地の全面返還を一日も早く実現しなければいけない。先送りは許されないという判断をしている」と述べ、政府は25日に辺野古で新たな区域に土砂を投入し始めた。
ただ、工事にはいくつもの難題が待ち受けている。その最大のものは「軟弱地盤」だ。いま埋め立ては、米軍キャンプ・シュワブの南西側で実施されているが、水深の深い北東側の大浦湾には「マヨネーズ並み」とも言われる軟弱地盤があることがわかった。地盤改良工事をしなければならず、砂でできた杭を約7万7千本打ち込む必要がある。防衛省は、地盤改良だけで3年8カ月かかると試算。全体の完成までは11年8カ月かかることになる。
安倍首相は普天間飛行場の危険性除去について「先送りは許されない」と言うが、沖縄県は「辺野古にこだわり続けることこそが先送りにほかならない」と指摘している。
辺野古埋め立て工事現場の新区域(手前)では厳重な警備の中、2カ所同時に土砂が投入された=3月25日、沖縄県名護市
どれも(C)朝日新聞社
辺野古の埋め立て工事に反対する大規模集会。メッセージボードを掲げて中止を訴えた=3月16日、那覇市
会談に臨む玉城デニー沖縄県知事(左)と安倍晋三首相=3月19日、首相官邸
解説者
伊東聖
朝日新聞那覇総局長
記事の一部は朝日新聞社の提供です。