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2019年1月1日付
2019年は4~5月にかけて天皇陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位、それに伴う改元が行われる。6月には大阪で主要20カ国・地域(G20)首脳会議、8月には横浜でアフリカ開発会議(TICAD)など政治イベントが目白押し。特に安倍政権の今後を占うとされるのが夏の参院選だ。
18年9月の自民党総裁選で三選を決め、歴代最長政権が視野に入った安倍晋三首相。悲願の憲法改正にも意欲を燃やすが、参院選の結果次第ではともに夢と終わる可能性もある。
約2年ぶりの国政選挙となる参院選の焦点は、自民党と公明党に加え、日本維新の会や希望の党などの「改憲勢力」で、3分の2以上の164議席を確保できるかどうかだ。だが、今年は12年に1度、統一地方選と参院選が重なる「亥年選挙」。統一地方選で疲れてしまった組織がうごけず、自民党は参院選で苦戦しやすいとされる。そこに山積みの政治課題が追い打ちをかける。
まずは米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題。政府は昨年12月、地元の反対をよそに辺野古沖へ土砂を投入した。
今年2月は、移設の賛否を尋ねる県民投票があり、沖縄で政権批判の声が高まるとみられる。春には衆院沖縄3区補選もあり、負ければ参院選へ悪影響が出るかもしれない。
5月の改元でも課題を抱える。政府は社会が混乱しないようにするため事前の新元号公布を検討しているが、これに首相の古くからの支持者が反発。新元号の公布を新天皇が即位する5月1日にするよう求めているからだ。
ほかにも、話し合いのきっかけすらつかめない北朝鮮問題や、片山さつき地方創生相の不祥事や桜田義孝五輪相の失態など首相の悩みは尽きない。前代未聞の公文書改ざん事件を引き起こした森友学園問題、友人に特別なはからいをした可能性が指摘される加計学園問題など、首相自身のスキャンダルによる有権者の不信も根深い。
日本を取り巻く国際情勢への対応も大きな課題だ。
安倍首相は昨年10月、7年ぶりに中国への公式訪問を実現させた。今年は中国の習近平国家主席が訪日する予定で、日中関係は良い方向に向かっている。
また、11月にはシンガポールで日ロ首脳会談を開催。北方領土の4島返還から歯舞群島と色丹島の2島先行返還に方針を変え、ロシアのプーチン大統領と平和条約を結ぶための交渉を進めることで合意した。
首相は今月下旬のロシア訪問と、6月末に大阪で行われる主要20カ国・地域(G20)首脳会議でもプーチン氏と会談を行い、外交成果を得て参院選でのアピール材料にしたい考え。自民党内には、2島先行返還の賛否を国民に尋ねる必要があるとして、参院選に合わせて衆院を解散する「ダブル選挙」を探る動きも出ている。
しかし、話はそんなに簡単ではない。ロシア側が2島先行返還をすんなり認めるとは限らないからだ。もし2島先行返還が実現しなかったり、残る国後島、択捉島の返還交渉に続かなかったりすれば、支持率低下につながりかねない。参院選の苦戦も間違いなく、負ければ憲法改正が遠のくどころか、議席数次第で、首相が辞任に追い込まれる可能性もある。
参院選を乗り切っても10月には消費税の10%引き上げがある。増税のせいで景気が悪くなれば、政権の支持率低下は避けられないため、政府は、クレジットカードなど現金を使わずに支払いをすればポイントを付けたり、最大2万円で2万5千円分使える商品券を発行したりするなどの対策を考えている。
1月 安倍首相がロシア訪問
通常国会召集
2月 沖縄県で米軍普天間飛行場の辺野古移設に対する是非を問う県民投票
4月 統一地方選
衆院沖縄3区補選
天皇陛下が退位
5月 皇太子さまが新天皇に即位し、改元
6月 大阪で主要20カ国・地域(G20)首脳会議。日ロ首脳会談も予定
夏 参院選
8月 横浜でアフリカ開発会議(TICAD)
10月 消費税を10%に引き上げ
米軍普天間飛行場の移設が計画される辺野古沿岸部=2018年12月3日
沖縄県の玉城デニー知事(左)との会談に臨む安倍晋三首相。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画をめぐる双方の主張は平行線のままだ=2018年11月28日、首相官邸
どちらも(C)朝日新聞社
ロシアのプーチン大統領(右)との首脳会談の冒頭、握手を交わす安倍晋三首相。首脳会談では、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した=2018年11月14日、シンガポール(C)朝日新聞社
解説者
星野典久
朝日新聞政治部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。