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2018年11月18日付
米国のトランプ大統領にとって、就任後初めて国民的な審判を受ける米中間選挙が6日に投開票され、連邦議会下院では野党・民主党が8年ぶりに過半数を奪還した。一方で、上院は与党・共和党が過半数を維持。上下院で多数派が異なる「ねじれ議会」となった。
4年に1度の大統領選挙の間にあるため、中間選挙と呼ばれる。下院(任期2年)の435議席すべてと、上院(任期6年、定数100)のうち35議席(補選2を含む)が改選された。
2016年に当選したトランプ氏がすすめる外国や移民に厳しい政策や、分断をあおるような政治手法、攻撃的な発言などの是非が問われ、上下両院で共和党が過半数を維持できるかが最大の焦点だった。
下院では、野党・民主党が改選前の193議席から大幅に増やし、過半数の218議席以上となった。
民主は、女性や若者、黒人や移民ら、トランプ氏に批判的な「反トランプ」票を掘り起こした。都市部から地方に変わる中間にある、住宅街の多い「郊外」の選挙区で、女性の候補者を多く立てて、共和党から議席を奪い取った。
一方、与党・共和党とトランプ氏は、下院よりも過半数を維持しやすい上院の選挙区を重視する戦略をとった。
トランプ氏の熱狂的な支持層である白人労働者が多い米中西部の「ラストベルト」(さびついた工業地帯)や、共和党を支持する農家が多い穀倉地帯「ファームベルト」などの激戦州を徹底的に回った。好調な経済や、中米から北上する移民の集団「移民キャラバン」の脅威をあおり、強硬な移民政策などを訴えた。
その結果、共和はインディアナ、ミズーリ、ノースダコタの各州で、民主現職から議席を取り返し、改選前の51議席を確保。過半数を維持することに成功した。
トランプ氏は翌7日の記者会見で、上院で過半数を守ったことから、「歴史的な勝利だ」と宣言した。
しかし、下院で敗北し、ねじれ議会となったことで、税金を下げる法案や、メキシコとの国境に壁を造ることなど、予算を伴う法案を成立させることは非常に難しくなった。
また、2年前の大統領選に介入したロシアと、トランプ氏陣営との不透明な関係が指摘される「ロシア疑惑」に関して、民主党が今後、議会で激しく追及することになりそうだ。トランプ氏を辞めさせるため、不正を明らかにして責任をとらせる「弾劾」の手続きを始める決定も、下院の過半数の賛成で決められる。もし、民主が多数決で始めれば、政治がさらに混乱する恐れがある。
さらに、トランプ氏は今回、支持が強いラストベルトの一角であるミシガンやウィスコンシンの各州で、上院選と州知事選の両方で民主に負けてしまった。再選を目指す20年大統領選に向けて、不安要因を抱えることにもなった。
フロリダ州オーランドの民主党集会で6日、テレビの開票速報を見ながら声を上げる民主党支持者ら
写真はどちらも(C)朝日新聞社
共和党集会の会場に登場したトランプ大統領を声援が迎えた=4日、ジョージア州メイコン
解説者
土佐茂生
朝日新聞アメリカ総局(ワシントン)記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。