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2018年11月4日付
来年10月の消費増税に備え、安倍晋三首相は10月15日の臨時閣議で増税後の景気の落ち込みを防ぐための経済対策の策定を指示した。対策の目玉は、中小の小売店で「キャッシュレス決済」で買い物をした人へのポイント還元だ。政府が年末にかけて詳細をつめる。
臨時閣議で安倍首相は、消費税率について「来年10月に8%から10%に引き上げる予定だ」と従来の方針を改めて示した。その上で「あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と強調。14年4月の前回増税時に個人消費が落ち込んだことを踏まえ、増税後の消費喚起策をまとめる。
今回新たな取り組みとなるのが、増税後の一定期間、中小の小売店などで買い物をした人にポイントを還元するしくみだ。レジで現金をやりとりするのではなく、クレジットカードやQRコードを使う「キャッシュレス決済」で買い物をした場合に、増税分と同じ2%のポイントを還元する方向で調整している。
政府としては、クレジットカード会社などの決済事業者に対し、ポイント還元にかかった費用を補助する方針だ。
また、小売店などが決済事業者に支払う手数料が安くなるよう要請する。店が決済に使う端末を新たに導入する場合には、購入費用も補助する。
補助の対象となる店舗の範囲や期間などの詳細は年末までに決める。政府はこのほか、買った価格を上回る分の買い物ができるプレミアム商品券の発行や、増税後に自動車や住宅を買う場合の支援策などを検討していく。
増税と同時に、飲食料品や新聞にかかる税率を8%に据え置く「軽減税率制度」も導入される。日本では初めて2種類の消費税率が使われることになり、政府は事業者に対し、対応の準備を早めるよう呼びかけている。
軽減税率が適用されるのは外食・酒類を除く飲食料品と、週2回以上発行され、定期購読されている新聞だ。消費税率が10%に引き上げられた後も、こうした飲食料品と新聞にかかる税率は8%のままとなる。
どちらの税率が適用されるのか、線引きがややこしいものもある。例えば、コンビニエンスストアで弁当とお茶を買った場合、持ち帰って食べれば8%だが、椅子やテーブルが設置された店内のイートインコーナーで食べる場合は「外食」とみなされて10%だ。
似ている商品でも、税率が変わることもある。料理に使う「本みりん」はアルコール度数が高く、「酒類」に分類されるため税率は10%だが、アルコール度数が1%未満の「みりん風調味料」は8%となる。
軽減税率が適用される商品を扱う事業者は、来年10月までに、2種類の税率に対応したレジの導入といった準備を済ませる必要がある。一方、日本商工会議所の調査では8割の中小企業が準備に取りかかっていないといい、政府が早めの準備を呼びかけている。
QRコードによるキャッシュレス決済。店舗の端末のQRコード(左)を利用者のスマートフォン(右)で読み込むと支払いができる
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
伊藤舞虹
朝日新聞東京本社経済部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。