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2018年7月29日付
宇宙ベンチャー企業、インターステラテクノロジズ(IST)の小型ロケット「MOMO(モモ)」2号機が北海道大樹町での打ち上げに失敗した。地球観測などに使う衛星が小型化し、民間企業による小型ロケット開発競争が激しさを増す中、日本企業はいまだ打ち上げ技術を確立できないでいる。
2号機は6月30日朝、同町のロケット発射場から打ち上げられたが、約8秒で落下、爆発した。昨年の1号機に続き、目標としていた高度100キロの宇宙空間に届かなかった。
ISTはMOMOのシリーズに続いて、「1桁安い打ち上げ費用」を目指し、重さ100キロの衛星を5億円以下で飛ばせるロケットの開発を目標にしている。だが、打ち上げビジネスはロケットの開発コストがかかる上、今回のような失敗のリスクも伴う。開発に出資した元ライブドア社長で実業家の堀江貴文さん(45)は「ロケット開発には米国でも多くの人たちが散っていった『死の谷』がある。なんとか越えたいと思っているが、簡単じゃない」と語った。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)のような、国が主導のロケット開発は、民間企業に主導権が移りつつあるのが世界の流れだ。
小型ロケットの開発では、ニュージーランドに発射拠点を置く米ロケットラボが1月、小型衛星の打ち上げに成功。中国のベンチャーも5月、試験打ち上げを成功させた。
民間企業が小型ロケットに相次いで参入する背景には、人工衛星の小型化が進んだことがある。これまでは重さ数トンの衛星が当たり前だったが、電子部品の高性能化などで、使い道を限れば1億円以下で作れる重さ数キロの衛星でも、地上撮影や科学観測が可能になってきた。そうすると、H2Aのような大きなロケットで小型衛星を大型衛星といっしょに打ち上げるより、小型ロケットを使う方が自由に打ち上げ時期を選べるようになる。
一方、民間企業によるロケットの実用化が進むと、打ち上げの安全対策も課題になる。
ISTは今回、航空法などに従い、あらかじめ飛行計画を国土交通省や海上保安庁に提出した。発射場がある大樹町も協力し、日本航空宇宙工業会のガイドラインに沿って、発射場から半径1.5キロ以内への立ち入りを禁止したり、漁船の出航を制限したりした。事故発生後、破片が飛び散る可能性もあるとして、社員らは発射場から約600メートル離れた場所にある指令所から避難。けが人はいなかった。
国内の宇宙産業を後押しする政府は、安全対策を義務づける法律を設けた。今年11月に施行する「宇宙活動法」で、地球を回る高度数百キロ以上の軌道に衛星を打ち上げる企業に、ロケットの設計や打ち上げ計画などの情報を提出させて、安全性を確かめる。事故の賠償に備え、損害保険への加入も義務づけている。
打ち上げ後、発射場に落下し炎を上げる小型ロケット「MOMO」2号機=6月30日午前5時30分、北海道大樹町
(C)朝日新聞社
解説者
浜田祥太郎
朝日新聞東京本社
科学医療部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。