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2018年5月20日付
インターネットを使った世界最大の交流サイト「フェイスブック」(FB)からたくさんの個人情報が流出した。ウソのニュースや、特定の人を傷つけたり攻撃したりするような投稿も問題視されている。利用者に不信感が広がっており、新たに法律で規制しようという動きも出ている。
FBは世界で20億人以上が利用している。使う時は原則、実名で登録。お互いに認めた人同士が「友達」としてつながり、日常の出来事を投稿することで、遠く離れた家族や友人が最近どうしているか、パソコンやスマートフォンなどから知ることができる。気に入ったページや投稿には「いいね!」をつけることもできる。FB社の最高経営責任者、マーク・ザッカーバーグ氏が大学生だった2004年に立ち上げた。
ところが今年3月、最大8700万人分の利用者の情報が流出したことがわかった。原因はFB上で質問に答えて自分の性格を診断するアプリ(ソフト)だ。利用した人だけでなく、その「友達」の名前や生年月日、どの場所にいたか、これまで「いいね!」をつけたページといった情報が吸い取られた。
情報は利用者が知らないうちに、英国の選挙コンサル会社に横流しされた。情報を元に16年の米大統領選でトランプ陣営にアドバイスしたとされている。
それ以外にも、選挙でウソのニュースや特定の人たちを攻撃する投稿や悪口が広がったのを見逃したと、FBへの批判が広がった。不信感から、FBを利用してきた人や会社の間で広告を出すのを取りやめたり、FBページを消したりする動きも出てきた。
4月、米議会に呼ばれて証言したザッカーバーグ氏は自身の情報も流出していたことを明らかにし、「悪用を防ぐ手だてが不十分だった」と謝った。対策として、投稿をどこまで公開するかや、アプリとFBの情報との連携状況を分かりやすくする機能を追加した。偽ニュース対策では、ネットの安全や投稿内容のチェックをする人を約1万5千人から年内に2万人以上に増やすと表明した。
しかし、利用者の個人情報を元にした広告でお金をもうけている会社の仕組みは変えないという。米議会の議員からは、大きなIT企業が情報やお金を独り占めしていることの悪影響を心配する声が上がり、規制しようという動きも出てきている。
FBは生活に欠かせない道具として使っている人も多い。セクハラ問題など、これまでバラバラだった一人一人の声をつなげて大きな動きにしたような役割は無視できない。
賢く使うためには、漏れてもかまわない必要最低限の情報しか登録しないことだ。またアプリを利用するときに自分や友達の情報が外に出ないようにする。心配であればFBが持っている自分の情報を確かめることもできる。また、どのページを見たかの記録をまとめて消せる機能も追加されるという。
解説者
香取啓介
朝日新聞
アメリカ総局記者
フェイスブック本社入り口にある「いいね!」。「1 Hacker Way(ハッカー通り1番地)」の表示がある=米カリフォルニア州
(C)朝日新聞社
記事の一部は朝日新聞社の提供です。