- 日曜日発行/20~24ページ
- 月ぎめ967円(税込み)
←2020年3月16日以前からクレジット決済で現在も購読中の方のログインはこちら
2018年3月25日付
日本政府に対し、「難民と認め、安心して定住できるようにしてほしい」と申請した外国人が昨年は1万9629人に上り、前年に比べて8728人増えた。7年連続で過去最多を更新したが、認められたのはわずか20人で、前年より8人減っていた。難民とは簡単に認めない政府の姿勢が浮き彫りになった。
難民は「人種や宗教などを理由に迫害され、母国から逃げた人」と難民条約で決められている。申請した国で難民と認められれば、強制送還されることなく生活できる。
日本での申請者の数は近年急激に増え、この7年間で約16倍になった。原因と考えられているのが、2010年に始まった申請者に対する認定制度の運用変更だ。不法入国した人たちを除き、申請から6カ月たてば、その後は審査を待つ間に安定した生活を送ってもらうため、日本で自由に働けるようにした。
しかし、この変更が、日本で働きたいと考えるアジアの国々の人に、「難民ではなくても、申請さえすれば日本で働ける」という誤解を広めてしまったといわれている。申請する人が多いと審査に時間がかかり、「本当の難民」を救えない。そう考えた法務省は、今年1月15日から再び認定制度の運用を変更した。
申請した人について、2カ月以内に書面だけの事前審査を行うよう改め、仮に「出稼ぎ目的」など明らかに難民でないとわかれば、強制的に母国に戻す手続きを進める。何回も同じ理由で申請を繰り返す人も同じだ。法務省の狙った通り、申請する人は半分程度まで減ったという。
一方で、日本で申請する人は多いのに、難民だと認めてもらえる人は極端に少ない。過去10年では毎年6~57人で、昨年もエジプトやシリア(各5人)、アフガニスタン(2人)など、わずか20人だった。
このほか、政府は内戦が続くシリアや少数民族への迫害があったミャンマーなどから来た計45人について、「人道的な配慮」として日本での滞在を許したが、難民だと認められたわけではない。
法務省は「条約に従い、本当に難民にあたる人だけを認めている」と説明するが、国内外からは「日本は判断が厳しすぎる」、「難民に冷たい」などの批判が上がっている。海外では16年にフランスが2万4007人、米国は2万437人、英国も1万3554人の難民を受け入れていた。
制度を正しく運用することは大切だが、助けを求めている人を保護するという本来の目的を忘れてはいけない。
ある難民問題の専門家は、こう指摘する。「わずかな難民しか救えない制度は、存在意義が失われている。世界の難民情勢の変化に、難民条約が追いついていない面もある。条約の定義にあてはまらない申請者についても、法的に保護する方法を導入するべきだろう」
迫害されたときの様子を支援者や弁護士に説明するアフリカ人男性=2017年9月、大阪市
どちらも(C)朝日新聞社
解説者
小松隆次郎
朝日新聞社会部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。