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2018年2月11日付
内閣官房長官が情報収集などに使う「内閣官房報償費(官房機密費)」の関連文書の一部が、明らかにされる見通しとなった。市民団体が使い道を明らかにするよう求めた三つの訴訟で、最高裁判所が初めて一部開示を認め、「全面不開示」としてきた国の処分を取り消す判決を言い渡した。
機密費は、首相を補佐する内閣官房長官が、内閣の仕事を円滑に進めるためにいつでも自由に使える資金だ。政策への協力を依頼する対価や情報提供者へのお礼、贈答品やお祝い、香典に使う慶弔費などに年間約12億円が使われてきた。
こうした機密費の使い道について、国は「協力者の特定につながり、信頼関係が壊れるおそれがある」などとして一切、明らかにしてこなかった。情報開示を求められても「全面不開示」としてきた。
官房長官の経験者の中には、朝日新聞の取材に対し、法案の審議を円滑に進めるため、与野党の議員に200万~300万円を手渡した、と証言した人もいる。海外視察に行く議員や学者への「餞別」、重要な国政選挙や知事選などで数千万円単位が「軍資金」として使われた、とも報じられている。
大阪市の市民団体「政治資金オンブズマン」のメンバーは、①小泉内閣(安倍晋三官房長官)の約11億円、②麻生内閣(河村建夫官房長官)の約2億5千万円、③第2次安倍内閣(菅義偉官房長官)の約13億6千万円について、使い道を明らかにするよう関連文書の開示を求める裁判を起こした。「何でもかんでも情報を不開示にする国の姿勢を問う」と訴えていた。
最高裁は1月19日の判決で、毎月の支払総額や残額などが記録された文書については、たとえ開示しても個々の支払いの日付や金額は明らかにならないと指摘。「国の重要政策にかかわる事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれはない」として開示すべきと判断した。
一方、支払先の名前や使い道の特定につながる文書は「開示すると、不正な働きかけが可能となり、安全が脅かされたり、情報が漏れたりするおそれがある」として、不開示が妥当と結論づけた。
菅官房長官は「政府として判決を重く受け止めて、適切に対応してまいりたい」と述べ、関連文書の開示についても「適切に対応したい」と繰り返した。
最高裁判決に基づき、関連文書が開示されても、機密費の支払先や具体的な使い道はわからないままだ。
だが、市民団体共同代表の阪口徳雄弁護士は、たとえ機密費であっても全面不開示は許されない、と最高裁が認めた点を重視する。「官房長官は今後、デタラメな機密費の使い方がしにくくなる。抑止効果をもたらすはずだ」と期待している。
官房機密費の関連文書の開示を認めた最高裁判決を喜ぶ原告たち=1月19日、東京都千代田区
(C)朝日新聞社
解説者
岡本玄
朝日新聞社会部記者
記事の一部は朝日新聞社の提供です。