朝日中高生新聞
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横田めぐみさん拉致事件から40年

2017年12月3日付

 新潟市の中学1年だったよこめぐみさん(当時13)が北朝鮮に無理やり連れ去られた事件から11月15日で40年が過ぎた。2002年に北朝鮮が事件への関与を認め被害者のうち5人は帰国したが、めぐみさんをはじめ、ほかの被害者は取り残されたままだ。

連れ去りの判明は25年後、北朝鮮は根拠示さず「死亡」

当時中1、部活を終え帰宅中に…

 「元気にめぐみちゃんを迎えてあげたい。それだけが望み」。11月18日、北朝鮮に連れ去られた人たちの帰国を求める集会が新潟市内であり、めぐみさんの母・さん(81)が語った。
 40年前の1977年11月15日夕、めぐみさんはバドミントンの部活を終え、家まであとわずかのところでいなくなった。
 自宅でシチューを作って待っていた早紀江さんは帰宅が遅いことを心配し、学校に迎えに行った。しかし、体育館にも友だちの家にもいない。父・しげるさん(85)や弟の双子とあたりを捜し回ったが見つからなかった。
 それから25年後、めぐみさんは北朝鮮に拉致されていたことが明らかになった。2002年、当時のいずみじゅんいちろう首相が北朝鮮を訪問。最高指導者だったキムジョンイル総書記が日本人拉致を認めた。北朝鮮は日本政府に「5人生存、8人死亡」と説明。めぐみさんは「死亡」とされた。ただ、その時期や根拠について北朝鮮は明確な情報を示さなかった。

政府認定の被害者17人のうち帰国は5人、帰り待つ家族は高齢化

国際社会と連携して粘り強く交渉を

 北朝鮮による拉致だと日本政府が認定している被害者は17人いる。このうち北朝鮮が「生存している」と認めた5人は02年に日本に帰国した。その一人はひとみさん(58)だが、一緒に拉致された母ミヨシさんは戻ってこないままだ。ほかにも日本国内でいなくなった人で、状況から見て拉致の可能性が疑われる「特定しっそう者」が470人以上もいる。
 被害者の家族らは「家族会」という組織をつくり、各地で講演や署名集め、国際機関での証言などを繰り返してきた。だが、02年以降に帰国できた被害者はいない。現在のしんぞう政権も拉致問題を「最重要課題」に掲げるが、北朝鮮との交渉は進んでいない。
 今年11月初めには、トランプ米大統領が日本を訪れた際に被害者の家族と面会し、協力する姿勢を示したため、家族からは今後に期待する声も聞かれる。
 一方で、めぐみさんの父の滋さんは体調が優れず、数年前から講演に行けなくなった。母の早紀江さんは「『めぐみちゃんだ』と分かる間に再会できなければ意味がない」と訴える。ほかの家族たちも高齢化が進む。
 核兵器やミサイルの開発を進める北朝鮮との関係は難しくなっているが、日本政府には国際社会と連携しながら被害者の帰国に向けて粘り強く交渉を続ける姿勢が求められている。

多くの聴衆が詰めかけた座談会で話す横田めぐみさんの母・早紀江さんの写真
多くの聴衆が詰めかけた座談会で話す横田めぐみさんの母・早紀江さん=11月11日、東京・新宿駅

横田めぐみさん拉致事件関連の経緯の年表
どちらも(C)朝日新聞社

清水大輔記者の写真

解説者
みずだいすけ
朝日新聞東京本社
社会部記者

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