朝日中高生新聞
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日産、神鋼――ものづくりの現場で不正

2017年10月29日付

 鉄鋼メーカーの神戸製鋼所(神鋼)がアルミニウム製品などの検査データを書き換える不正をしていた。製品は飲料缶から新幹線まで様々な分野で使われている。日産自動車では資格のない人による新車の検査が見つかるなど、ものづくりの現場で不正が相次いでいる。

出荷前の新車を無資格者が検査、金属材料のデータを偽装

発覚後も不正を続け、出荷停止も

 神鋼は、強度や寸法など取引先が求める水準を満たしていないのに、データを書き換えて、基準を満たしているようにいつわっていた。必要な検査をしていないのに、架空の数字を検査証明書に記していたこともあった。
 不正は、アルミや銅、鉄鋼製品で見つかった(下の表は13日までの判明分)。いずれも、ものづくりで幅広く使われる金属材料で、出荷先は国内外の約500社に及ぶ。部品などに加工されて転売されているものも多くある。現時点で安全上の問題は見つかっていないが、部品の交換を求める声があがっている。
 また、問題がわかった後も、一部の工場で、管理職を含む従業員らがデータを書き換えたことを隠していたことも明らかになった。
 一方、日産は今年9月、資格を持たない人が出荷前の新車を検査していたと発表し、約116万台の大量リコール(回収・無償修理)を届け出た。問題を国から指摘された後も、不正を続けていたこともわかり、10月には新車の出荷停止につながった。
 今年6月には、エアバッグの欠陥で大量のリコールを招いた自動車部品大手タカタが1兆円以上の負債を抱えて倒産。2016年4月には、三菱自動車で燃費データの不正が発覚した。

組織ぐるみか、「日本製」への信頼揺らぐ

原因究明し、再発防ぐ仕組みづくりを

 日本の製造業は長く、品質の高さが評価されていた。経済の国際化が進み、日本企業は海外企業とも激しく競争している。最近では品質だけでなく、できるだけ安くしたり、早く製品を納めたりするよう要求は厳しくなる一方だ。
 神鋼や日産は不正問題の原因を調べているが、いずれも個人の行為ではなく、管理職を含む組織ぐるみの可能性が高い。不正があった現場は、こうした要求のプレッシャーを感じていたといわれている。品質よりも納期や利益を優先する意識や、「少しならルールを破ってもいい」といった甘えが組織全体にあったこと、企業が人件費を抑制し、人材不足が進んでいることも指摘されている。不正を見つける仕組みが十分でなかった可能性もある。
 この問題は海外でも大きく報じられた。米国の新聞ニューヨーク・タイムズは、1面トップで「日本のイメージに打撃」という見出しで神鋼の問題を報道。相次ぐ不祥事に触れ、「日本は製造業の品質に対する評判が支えなのに、台無しになっている」と指摘した。
 なぜ数々の教訓が生かされず、不正が繰り返されるのか。原因を究明し、不正を繰り返さない仕組みをつくることが、長い時間をかけて築き上げてきた信頼の回復には欠かせない。

神戸製鋼がデータ改ざんした製品の表

記者会見での神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長の写真
記者会見で険しい表情を見せる神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長(右)=13日、東京都港区
どちらも(C)朝日新聞社

小室浩幸さんの写真
解説者
むろひろゆき
朝日新聞経済部記者

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