朝日中高生新聞
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自動運転技術の開発競争が激化

2017年9月10日付

 ハンドルやブレーキを操作しなくても目的地に届けてくれる自動運転。そんな未来が現実味を帯びてきた。自動車メーカーに加え、IT産業からも次々と企業が参入。競争は激しさを増している。

事故・渋滞減らしや「買い物弱者」の支援などに期待

開発の進み具合の目安は5段階

 6月、栃木県のホンダの試乗コースで最新の試作車に乗った。ハンドルの「AUオーTO」ボタンを押せば、自動運転モードに切り替わる。前を走る車に追い付くと、自動で右に車線変更して時速100キロで追い抜いた。
 高速道で渋滞にあった想定で、ゆっくり走る別の車の追走を始めると、車内中央の画面が切り替わった。目をそらして画面に映るホンダ社員と会話した。渋滞の想定が終わるとシートベルトがぶるっと振動。前方の監視を再開するように、との合図だった。
 このような自動運転技術が進むと、事故や渋滞を減らす効果が期待される。バスなどの公共交通が整っていない地域では「買い物弱者」を支援でき、バスやトラックといった運転手不足の解消にもつながる。
 では自動運転技術はどこまで進んでいるのか。車メーカーによる開発の進み具合の目安となるのが、国土交通省などが用いている米国の自動車技術者協会が示す五つのレベルだ。

車メーカーだけでなく、IT企業も次々に参入

「完全自動」の実用化には多くの課題

 ある条件の下で前後・左右の移動を自動制御するレベル2までは、すでに日産自動車などが商品化している。ドイツのアウディは7月、レベル3の技術を搭載した新型車を2018年に売り出すと発表した。
 レベル3になると、運転手はハンドルから手を離すことができ、事故時の責任は車メーカーが負うようになる。だが、この新型車で自動運転できるのは、中央分離帯のあるドイツの高速道路だけ。さらに、混雑時に時速60キロ以下で走る場合、という細かい条件がつく。
 日本の法律では、ハンドルを離して車に任せきりの運転は許されていないため、日本でいつ実用化できるかはわからない。それでも、その先のレベル4の車について、トヨタ自動車が20年代前半にも導入する方針を打ち出すなど、各社は開発に前のめりだ。
 競争は車メーカーにとどまらない。自動運転に欠かせない人工知能(AI)に強みを持つ米国のグーグルのようなIT企業も次々と参入している。
 ソフトバンクが16年に設立した会社「SBドライブ」は今年7月、東京都内で新型車両の実験を公開した。レベル4以上の完全自動運転を想定した車は、ハンドルだけでなくアクセルやブレーキのペダルもない。将来は過疎地での利用をめざしている。
 日本政府は「20年までに、過疎地などの限定区域で完全自動運転のサービス提供を実現する」と掲げる。
 ただ、法改正の見通しは立っておらず、自動運転の車が事故を起こすのでは、と心配する人もいる。実現のためにクリアすべき課題は多い。

歩行者が進路に飛び出すとセンサーで検知して停止したSBドライブ社による自動運転バスの写真
SBドライブ社による自動運転バスを使った公開実験。歩行者が進路に飛び出すとセンサーで検知して停止した=7月、東京都港区
(C)朝日新聞社

自動運転の五つのレベルを示す表

木村聡史さんの写真
解説者
むらさと
朝日新聞経済部記者

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