金 賞

里山の魅力の復活を
兵庫県 関西学院中学部 3年 吉岡明衣子

太陽光発電は、CO2を排出しないクリーンなエネルギ だ。太陽ー光パネルは、家の屋根や店の外壁、母校の初等部に設置され、よく見かける。先日、家族と遠方の墓参りに行くため自動車で数時間、山間部の高速道路を走った。そこで、気になる光景を見かけた。斜面の一面の樹木がごっそり伐採され太陽光パネルが設置されている山があちらこちらに見えたのだ。私は少し違和感を覚えた。太陽光発電がCO2を排出しないからといって、CO2を吸収するはずの森林を伐採して太陽光パネルを設置するのは本末転倒ではと疑問を持った。

私は小学生の頃に授業で里山について学び、様々な生物が住み生態系を形成していることを知った。太陽光パネルのある山も里山であり、残念なことにその里山の生態系が崩れたと分かった。田舎の親戚の畑が猿に荒らされたという話を聞いた。近隣に太陽光パネルができて、猿の餌場が減ったからでは?と連想してしまった。また、太陽光パネルにより住処を奪われた猪が、人里におりてくるという新聞記事を目にした。

里山に太陽光パネルを設置するのは、所有者の収入源になるからだろう。かつて里山は薪というエネルギー源を供給する重要な役割があり、大切にされたはずだ。しかし、そのエネルギー源が電気やガスヘと代わり役割を失った。高齢化で農業が困難となった森林所有者が太陽光パネルに収入を期待するのも無理はない。だから、この問題の解決には、所有者にとって森林が収入源として魅力あるものに復活する必要があると思った。

私はバイオ炭という取り組みを知った。CO2を吸収して成長した植物や、植物を食べて成長した家畜の糞を炭にすることで、炭素のまま地中に戻す取り組みである。大昔の炭素でできた化石燃料を大気にばらまいたのなら、それを植物に吸収してもらって炭として地中に戻すのはわかりやすい取り組みだ。炭づくりにもエネルギーが必要だが、休耕田や建物の屋根など平地に設置した太陽光パネルで賄えばよいと思った。バイオ炭はJ―クレジットという制度に認定され、それによる CO2吸収量はクレジットとして売買できる。里山の木々を計画的に伐採し炭に変え地中に埋める一方で、新たな植林を繰り返し、それで得たクレジットを必要とする企業などへ売ることで、山の所有者の収入源になるかもしれない。だが、木を薪にする作業は、少し想像しただけでも大変だ。この重労働を自動で行える伐採システムや薪割ロボットを開発することとが、日本の持続可能なエネルギ ー施策や環境施策となるのではないかと考えた。

今回、私は炭について興味が湧いてきた。私は大学へ進学するとき、生命や環境に関する研究をしてみたいと考えている。そのテーマの候補として、炭や炭素循環に関して、これからさらに深堀りしてみたいと思う。