金 賞

台所から始めてみよう
岩手県 奥州市立水沢中学校 3年 竹花紀慧

「ふりそそぐ日の光 月影のせて 川は北上 ゆたかに流れ」※1

「流れてつきぬ 北上川 胆沢川」※2

これは僕たちの母校の校歌の一部だ。生活を支え、風景の一部になっている大切なものだからなのだと思う。

北上川の源流に行った。静かな境内にある大木の根本から流れ出る小さな流れ。夏でも冷たく、口にするとやわらかさを感じる。生命を育む源であることを実感した。

追波おっぱ湾に注ぐ河口へ向かった。川幅は広い。途中でたくさんの田畑を潤したその流れは太陽を受けて輝き、おだやかだった。

僕は毎年水質調査に参加している。今年も水質階級lだったが、これが続くとは限らない。なぜなら、北上川は四十年ほど前「死んだ川」と言われていた時期があったからだ。鉱山から出る強酸性坑廃水でJI Iは赤く染まり、生き物がすめなくなってしまったのだ。きれいな川は当たり前ではないことを感じる。

また、川の水質汚染の原因の一つに生活排水があるそうだ。思い当たることがある。調味料がついた皿や牛乳が少し残ったコップをそのまま洗ってしまうことがあることだ。

台所と川はつながっているのだ。そして、海へとつながっているのだ。

台所とつながっている問題で、もう一つ気になっていることがある。食品ロスが二酸化炭素を増やしているということだ。どういうことか調べてみた。食べ残されるなどした食品はトラックで運ばれ、可燃ごみとして焼却されるからだそうだ。その二酸化炭素排出量は年間約三十七億トン。総排出量の約8パーセントを占めるという。これも思い当たることがある。うちは食べ残しはほとんどないが、気づかずに賞味期脹切れしてしまった冷凍食品や保存食、開けたまま古くなってしまったジャムなどを廃棄することがあることだ。

台所と世界はつながっているのだと思う。その他、海のマイクロプラスチック問題、排気ガスによる大気汚染など喫緊の課題は多い。でも、対象は地球。規模が大きすぎて何もできないと思えていたが、このまま温暖化が進んでしまったら、この風景が変わってしまうかもしれない。さらに、大好きなスキーをしたり、新巻鮭やリンゴを食べたりすることができなくなってしまうかもしれないなど、自分事として考えると、できることがたくさんあるように思える。皿に残った調味料をふいてから洗うこと、洗剤は使いすぎないこと、食べ物を大切にすること。まず台所など身近なところから実践していこうと思う。

僕たちにできることは小さく、すぐに結果は出ないけれど、それこそが将来の大きな成果につながること、そして、僕たちの生活は自然に影響を受けるけれど、自然に影響を与えていることを忘れてはいけないと思う。

全ては僕たちの手元から始まっています。みんなでこの風景を未来へ届けませんか。

※1)奥州市立水沢中学校校歌 ※2)奥州市立水沢小学校校歌
(参考文献:Our World in Data HPより)