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朝日小学生新聞 2020年3月1日付け1面より
春休みまで休校になるとしたら、心配なことはなんですか――。
新型コロナウイルスの感染の広がりを防ぐため、政府が全国の小、中、高校と特別支援学校を臨時休校にするよう求めたことについて、朝小編集部は朝小リポーターに緊急アンケートをしました。
100人以上から回答があり、授業のおくれや、卒業式などの行事がどうなるのかを心配する声がたくさんあがりました。(構成・中山仁)
デマで紙製品売り切れ
観光地あいついで休園
新型コロナウイルスの感染者が増えつづけています。
2月28日、北海道の鈴木直道知事が「緊急事態宣言」を出し、道民に週末の外出をひかえるように呼びかけました。宣言の期間は3月19日までです。
北海道では2月27日から、小中学校と特別支援学校の計約1700校が休校しています。道内の感染者は計66人で全国最多(28日時点)。
このまま感染者が増えると、感染症に対応できる病院でベッドの数が足りなくなるという心配もあります。
国民の生活にも影響が出ています。ここ数日、マスク以外にも、トイレットペーパーやティッシュペーパーが売り切れになる店が増えました。
インターネットで「新型肺炎の影響で今後なくなる」などといったデマが広がったことが原因とみられます。業界団体や政府は「在庫は十分。冷静な行動を」と呼びかけました。
全国の娯楽施設で休園があいついでいます。東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)などが、29日から臨時休園しました。
感染者は国内だけでなく、イラン、イタリア、韓国など世界各国でも増えています。
世界保健機関(WHO)は28日、世界的な感染拡大や影響のリスクを「高い」から「非常に高い」に引き上げたと発表しました。
みんなの心配ごとは?
足りない授業 卒業式、お別れどうなるか…
「学年末のテストなどがどうなるのか」(群馬県・4年)、「6年生の授業が終わってなくて、中学の勉強についていけるのか」(神奈川県・6年)、「どのタイミングで補習をしてくれるのか」(兵庫県・4年)……。
心配なこととして7割以上の人があげたのが、まだ終わっていない、今の学年の勉強のことです。 「来年度は6年生で、5年生の勉強がプラスされて授業時間が7時間になったら大変だな」(福岡県・5年)と、再開後への不安をこぼす人もいます。
イラスト・ふじわらのりこ
「通知表をもらえるかどうか」(東京都・3年)という声も複数ありました。 6年生のほとんどが心配するのが、卒業式ができるのかです。
「卒業式の練習ができない。残り少ない友だちとの時間がなくなってしまう」(静岡県)など、どの声も切実です。
「感謝の気持ちをこめて6年生を送りたかったのに、できないかもしれないと思うと悲しい」(東京都・5年)という下級生の声もあります。
「担任の先生へ最後にお礼の手紙をわたしたかったが、そのチャンスはあるのか」(千葉県・3年)と、先生との別れを心配する人もいました。
イラスト・ふじわらのりこ
家でどう過ごす?
勉強して読書、料理… 生活リズムを保つ
アンケートでは、休校になったら家でどのように過ごすかも聞きました。
「残しているドリルをやったり、家でお菓子作りをしたりする」(神奈川県・5年)、「勉強してから、家の中で遊ぶ」(大阪府・6年)など、まずは勉強するという人が半数以上でした。
「ゆっくり過ごす。そのために、図書館で本をたくさんかりてきました」(東京都・2年)、「お料理やものづくりなど。本もいっぱい読みたいです」(大阪府・3年)など、この機会にまとめて読書をしたいという声も多いです。
イラスト・ふじわらのりこ
「学校のリズムをくずさないように、午前中はドリルや漢字検定の勉強をして、午後は自由に過ごす」(東京都・1年)、「時間割を決めて勉強する」(宮城県・・5年)、「早寝早起きして生活のリズムを整えて免疫力を保つ」(埼玉県・・5年)など、生活習慣が乱れないように家族と話し合ったという声も目立ちました。
「母が仕事の時は妹の面倒をみる」(東京都・5年)という人もいます。
イラスト・ふじわらのりこ
朝日小学生新聞 2020年2月29日付け1面より
こまめに手洗い/部屋の空気入れかえる
学校が休みになると、家で過ごす時間が長くなりますね。家の中でも、ウイルスに感染しないために気をつけたい点や、子どもだけで留守番をする場合の注意点を、専門家に聞きました。(小勝千尋、中田美和子)
ウイルスは口や鼻、目から体に入ります。ウイルスがついているかもしれない手で、顔をさわらないようにしましょう。
家に帰って1度せっけんで手を洗ったら安心、というわけではありません。自治医科大学附属さいたま医療センター小児科教授の市橋光さんは「家の中でもこまめな手洗いが大切」と話します。
手を洗う前にさわった場所にはウイルスがいる可能性があり、またそこをさわれば、ウイルスが手につきます。家族が帰ってきたら、いっしょにまた手洗いをするのもいいでしょう。
マスクは、長時間つけると耳が痛くなったり、口元がかゆくなったりするので、家でずっとつけるのはむずかしいかもしれません。ただ、家族に熱やせきの症状があれば、周りの人もマスクをつけた方がいいといいます。
「家族に症状が出たら、なるべく別の部屋に1人でいてもらい、近くでの会話はさけましょう」
みんながさわるドアノブやリモコンなどは、アルコールなどで消毒します。
房をつけると、部屋の空気が乾燥します。「乾燥した空気を吸いこむと、体の空気の通り道も乾燥し、ウイルスに感染しやすくなります。加湿器をつけることで、乾燥を防ぐことができます」
部屋の空気を入れかえることも重要です。特に体調の悪い人が家にいる時は、こまめに窓を開けて空気を入れかえた方がいいといいます。
学校に行かないと、体を動かす機会が減ったり、ねる時間や食事の時間が今までと変わったりするかもしれません。生活のリズムが乱れると、病気とたたかう力「免疫力」が落ちてしまいます。
市橋さんは、免疫力はすぐに下がることはないといいますが、「規則正しい生活を送ることが大切」と話します。「十分な睡眠と、バランスのよい食事を取りましょう。庭やベランダなどで体を動かすことも大切です」
留守番する時
ルールを決めておく/「遊ぼう」 さそいに負けない
一人やきょうだいだけで昼間過ごす場合、何に気をつけたらよいでしょうか。
埼玉大学教育学部教授の吉川はる奈さんは「まずはふだんからのルールの確認を」と言います。
インターフォンや電話が鳴ったら、どうするか。調理は子どもだけでどこまでするか。SNSやゲームの時間はどう決めてあるか。
体調が悪くなるなどこまった時の連絡先は、いくつか用意しておきます。低学年の子は、時間を決めて保護者と電話で話すのも一つの方法です。不安やさみしさを感じたら「好きなことをたっぷりすると気持ちが落ち着く」と言います。
高学年の子には「この状況を自立のきっかけと前向きにとらえては」と吉川さん。やるべきことと時間の割りふりを大まかに決め、自分で時間管理をします。簡単なお手伝いをすると、喜ばれて自信もつきます。
「子どもの危険回避研究所」の所長・横矢真理さんは「不安の棚おろし」をすすめます。気になることを書き出し、どう対応するか、親子で相談します。ねる前だと不安がつのるので、明るい時にしましょう。
食事では電子レンジの出番が増えそうです。熱くなった容器でやけどしたり、ふきこぼれたりといった事故も起きるので、使い方を親子で確認します。火事や地震など「もしも」に備えて、かぎの置き場所、かけ方は覚えておきましょう。
新型肺炎の影響が広がり、大人はピリピリしています。横矢さんは「外では知らない人にどなられたり、暴力をふるわれたりする危険もあるので気をつけて」と言います。
「遊ぼう」というさそいを断ると、「おくびょうだ」と言われるかもしれません。でも「おくびょうな人は事前に準備するから、かえって強くなれる。自信を持ってください」。
朝日小学生新聞 2020年2月29日付け1面より
小中高校など
新型コロナウイルスの感染がさらに広がるのを防ぐため、全国すべての小、中、高校と特別支援学校を、3月2日から春休みまで臨時休校とするように、安倍晋三首相が2月27日に求めました。
「何よりも子どもたちの健康、安全を第一に考え、感染リスクにあらかじめ備える」として、入学試験や卒業式を行う場合は、感染防止の対策をとったうえで必要最小限の人数にすることも要請しました。
役所や会社に対しても、通学する子どものいる保護者が休みを取りやすい環境を整えることなどをたのんでいます。
厚生労働省は、保育園と学童保育は原則として開くことを求めると、自治体に伝えました。
自治体が判断
首相の要請を受けて文部科学省は28日、臨時休校のお願いを、全国の都道府県教育委員会などに通知しました。こういった要請をするのは初めてのことです。
休校の期間や形については、地域や学校の実情をふまえて、各自治体が判断してよいとしています。
休み中の子どもたちには、人が集まる場所などへの外出をさけて自宅で過ごすよう、指導を求めます。
大阪府東大阪市の小学校は、3月2~24日が休校となり、そのまま春休みに入ります。
市立孔舎衙小の校長の高山卓三先生は2月28日の集会で、子どもたちに「命や健康にかかわることのために、大人が一生懸命やっている。がまんせなあかんことはあるけれど、日本中の人たちができることを協力しあっているんだよ」などと話しました。
卒業式が予定通りにできなかったり、通知表をわたすめどが立たなかったりします。「不安に思う子もいるでしょうが、春に元気にみんなで会おうね、という気持ちを伝えたかった」と高山先生。
とまどいの声
臨時休校になるかもしれないというニュースを知り、保護者からは、とまどいの声もあがっています。神奈川県のTさん(3年)の保護者は「急に休校と言われても学年最後のまとめができておらず、中途半端な感じです」。
東京都のHさん(3年)の保護者は、仕事を休めるかわからないといいます。「子どもたちに安全と十分な健康状態を確保できるか心配です」