18歳選挙権 もっと政治に興味を持とう

出典:朝日小学生新聞 2019年1月25日付

 大改革に政権交代。平成は日本の政治が大きく動いた時期として、歴史にきざまれそうです。2016(平成28)年に、選挙で投票できる年齢が18歳以上に引き下げられた「18歳選挙権」もその一つ。以後2度あった国政選挙を経て、見えてきた希望や課題があります。(松村大行)

投票後、政治ウォッチャーに
タレントの井上咲楽さん

 1999(平成11)年生まれでタレントの井上咲楽さん(19歳)は、テレビ番組などで国会議員と話したり、政治について発言したりしています。18歳だった2017(平成29)年の衆議院議員選挙では、出身地の栃木県で投票。「都会より人口が少ないぶん、一票の重みを感じました。結果も気になりました。ただ同級生の間で話題にのぼることはなく、『親に言われたから投票した』という人もいました」

わたしたち平成生まれ
政治について取材をしている井上咲楽さん=去年12月、東京都目黒区

わたしたち平成生まれ
新聞のスクラップや議員の人となりについてまとめたノート

ヌカガハの分裂?
 政治に本格的に興味を持ったのはその後です。去年の初め、テレビのニュースで「ヌカガハの分裂」という言葉を聞きました。調べると、「国会議員の額賀福志郎さんを中心としたグループ(派閥)が仲たがいした」という意味でした。大人でもグループ内で仲たがいがあるんだと知り、政治がぐっと身近になりました。

 今は国会の傍聴席で議論を聞いたり、去年9月の自民党の総裁選挙を現場で取材したりしています。議員の顔は見分けにくいと、似顔絵をかき、人となりや人間関係を整理します。

 ときどき「若いのに政治に関心があってえらい」と言われるそうです。「海外では私と同じ世代でも、政治に訴えかけないと道が開けない人たちがいます。政治に対して行動しなくてすむのは平和なことかもしれないけど、国の将来を考えると、私はもっと政治に興味を持とうよと思います」

若者にこそ考えてほしい将来
 18歳選挙権は、憲法を改正する時に行う国民投票の議論から始まりました。国の将来をになう若い世代に関わってもらおうと、投票年齢は18歳以上に。選挙権もそれに合わせることにしました。

 国政選挙で初めて10代が投票したのは2016(平成28)年の参議院議員選挙です。その時の10代の投票率は46・78%。次の年に行われた衆院選は40・49%でした。模擬投票が行われるなど注目が集まったにしては低い結果です。

 ただ、1995(平成7)年に政治記者となった朝日新聞編集委員の国分高史さん(54歳)は「時代の流れを考えると、しょうがない面もある」と話します。

大改革に政権交代
 平成の政治は、衆院選のしくみを1人しか当選しない「小選挙区制」に変えるなど、改革から始まりました。国会議員が企業からわいろを受ける事件が昭和の終わりに起き、政治が信頼を失い、投票率は昭和の時代と比べて急落しました。

 小選挙区制でめざしたのが、選挙での政権交代です。それが2009(平成21)年の衆院選でかたちになりました。投票率が平成で2番目に高い69・28%に達し、民主党が大勝。国分さんも取材を通じ、「政治が大きく変わる期待を感じた」といいます。

わたしたち平成生まれ
政権交代を報じる2009(平成21)年9月1日付の朝小紙面

 しかし民主党政権は期待に応えられず、12(平成24)年の衆院選で、自民党が政権に返り咲きます。その時の投票率は59・32%。その後2回の衆院選でも52・66%、53・68%とふるいません。18歳選挙権の始まりは、政治への関心が下がる時期に当たってしまいました。

わたしたち平成生まれ

 「全体の関心が下がる中、10代だけ投票率が上がるというのは難しいです。もっとも、若い人にこそ考えてほしい将来の課題もあります。小学生には、政治に今から関心を持ち、投票の機会に備えてほしいです」


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