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映画「ワンダー 君は太陽」を見て、見た目問題を考える
「見た目問題」でなやんだ三橋雅史さん(中央)の経験を朝小読者に伝えようと、こども記者が次々と質問しました =2018年5月6日、東京都中央区の朝日学生新聞社
朝小では読者による取材会「集まれ!こども編集部」の第1回を2018年5月6日に開きました。テーマは、人とはちがう外見のためにいじめや差別に直面する「見た目問題」です。17人のこども記者が映画「ワンダー 君は太陽」を見た後、主人公のオーガストと同じように子どものころ「見た目」でなやんだ三橋雅史(みつはしまさふみ)さん(36歳)に取材しました。
映画の主人公は、顔に障がいのある10歳のオーガスト(オギー)です。27回の手術を乗りこえ、初めて学校に通い始めます。
同級生は最初、オギーの顔を見ておどろいたり、目をそらしたり。友だちになったはずのジャック・ウィルも「ぼくがあんな顔だったら、自殺しちゃうよ」と、かげ口を言ってしまいます。
三橋さんには生まれつき、顔の左側に赤いあざがあります。「ぼくもオギーと同じ経験をしました。10回、20回、100回くらい言われてる」。オギーにさわると「菌」がうつる、といういじめについても、「同じです。『三橋菌、えんがちょ』なんて経験をずっとしてきました」。
Q(こども記者の質問) いじめられて、どう行動したんですか。
A(三橋さんの答え) 対抗できなかった。「自分はだめなんだ」「価値がない人間なんだ」って信じこまされて、いじめられることがふつうなんだって思っちゃってました。
三橋雅史さんは市役所職員として、児童相談所で子どもたちを助ける仕事をしています
三橋さんは中学では卓球部で活躍し、楽しく過ごしましたが、高校では友だちができず、大学を中退。家に引きこもってしまいました。でも、思いきって新聞配達のアルバイトを始めます。そして、住んでいた千葉県から沖縄県の波照間島へ、自転車で旅に出ました。
Q 自転車の旅でうれしかったのは?
A 日本最南端の碑まで行った時、「自分が立てた目標を自分の力でできる人間なんだ!」って感じたのが強烈にうれしかった。
人の優しさにもふれました。熊本県水俣市ではおみやげ屋さんが「おなかすいてるんでしょ」と試食品を差し出してくれました。長野県のお寺の前で野宿していた時は、警備員の人が「寝ちゃいけない場所だよ。……注意はしたからね」って、次の見回りの時も、ぼくを追いはらわなかった。優しさを受けると「ありがとう」で終わりじゃなくて、返したい、伝えたいって気持ちになるんだよね
Q 人生で一番、言われてうれしかった言葉は?
A 「おはよう」です。自転車の旅の後、もう一度大学に通い始めました。オギーといっしょで「友だち、できるかな」「どう人づきあいしたらいいんだろう」と思ってたんです。そんな中で、大学の門をくぐって歩いている時に、女の子がバーッと走ってきて、「おはよう」って言ってくれたの。「自分とかかわったらきらわれるよ」って考えでこりかたまってたから、本当にうれしかった。
三橋さんは自転車旅で出会ったホームレスの人や、つらい境遇の子どもを助けたいという思いから福祉を勉強し、今は市役所の児童相談所で働いています。
Q 障がいがあるから学べたことはありますか。
A つらい経験を重ねると、こまっている人やめぐまれない子どもの気持ちがすごくわかる。共感できる。それがぼくの強みですね。
Q 今も、人の視線は気になりますか。
A うん。みんな見るんだよね。もういいの。「変な顔だな」って思うのは自由。言わなきゃいいんだよ。見られるのは気分のいいものではないし、なれるのに何十年もかかったけどね。
Q もしもあざを消せるなら消したいですか?
A 正直に言うと、消したい。じろじろ見られない世界を経験してみたい。でも今、すばらしい人生を送っています。あざがなかったらこんなに「人のために」って思えてないだろうな。
Q オギーのような障がいをもつ子は、どのように接してもらったらうれしいでしょうか。
A むずかしいようだけど、けっこう簡単。ふつうに接すればいいんだよ。「ガム、好き?」とか何でもいいから話しかけたら、「何、この変なお兄ちゃん」って思われるかもしれないけど、仲良くなれるよ。
ぼくは、声をかけてもらうのはうれしかった。自分からは声をかけられなかったから。話しかけるのは、みんなにもできることです。
Q ほかに、今日からできることはありますか?
A じゃあ、魔法を教えてあげます。今後、顔だけじゃなくてもちょっと変な人がいて、友だちが「何あれ、気持ち悪くない?」って文句言ってきたら、何て答えるか。「まあ、いろんな人がいるよね」。これが、みんなを大事にする魔法のフレーズだと思ってるので、ぜひ使ってください。
三橋さん(後列中央)とNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」の外川浩子さん(右はし)、取材したこども記者
映画でオギーを演じたのは、カナダ出身のジェイコブ・トレンブレイさん(11歳)です。
撮影が始まる前に「見た目がちがう」子たちのキャンプに参加して、たくさん友だちができたんだ。プールに入ったり砂浜に行ったり、楽しかった! 最近もいっしょに遊んだよ。見た目がちがう子たちも、ぼくと同じように、ふつうにあつかってほしいんだ。
台本を読んだ時、たくさんの子どもが外見のせいでいじめられてるんだって考えて、涙が出ちゃった。初めてオギーの特殊メイクをして、教室に入るシーンを撮影した時は、クラスメート役のみんなが目を見開いたり、口をあけてたりして、つらかったな。でもオギーは勇敢で性格もよくて、自分らしくあり続けようとするから、すごいよね。
いじめは世界中のどの国にもあると思う。この映画を見てくれるみんなに、「他人を尊重し、同じように自分も大事にする」ってことが伝わったらいいな。
親切な行いを選んで、周りの人を大切にしてほしい。ぼくはいつも親切でいるように努力してるよ。親切にするって、簡単。ただ、ほほえみかけることから始めればいいんだ。