おしっこをおいしい水にできるんです |
2010年宇宙の水事情 |
いま宇宙にいる野口聡一飛行士は、子どもたちに向けた絵本の読み聞かせで「宇宙では水がとっても大事」と話しました(三日前の朝小1面で紹介)。野口さんが暮らす国際宇宙ステーション(ISS)には水再生装置があり、汗や尿などをリサイクルしています。宇宙で自給自足する環境づくりを研究している宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小口美津夫さんに、ISSの水事情を聞きました。
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| 宇宙に行く前、アメリカの装置で水再生の訓練をする野口さん=JAXA提供 |
宇宙で水の値段は
「宇宙で五百ミリリットルの水はいくらすると思いますか?」と小口さんは問いかけます。
宇宙で水を得ることはできないので、ISSで水が足りなくなったら、地球から持ってくるしかありません。乾燥させると軽くなる食料とちがい、水は液体のまま運ぶため、重く、輸送費がかさみます。「コップ一杯で30万〜40万、500ミリリットルで100万円です」(小口さん)
宇宙飛行士たちは、水を使わずに髪を洗う、歯みがきが終わったら飲み込む、シャワーやお風呂の代わりに湿気を含んだタオルで体をふくなど、節水しています。「洗面をコップ一杯の水ですませています」と野口さんも話していました。
日本の85分の1の量
JAXAによると、ISSで消費する水の量は、乗組員一人あたりが一日に約3.5リットル。地上では日本で一人あたり一日平均約300リットル(国土交通省調べ)です。
ISSでは、2008年に打ち上げられたアメリカの水再生装置で、尿から飲料水をつくれるようになりました。尿を加熱して、蒸発した水分を集め、エアコンからの凝縮水(汗などが蒸発したものを集めたもの)といっしょにろ過して、不純物をとりのぞく仕組みです。一人が一日に使う3.5リットルのうち2.2リットルは、こうした再利用の水でまかなっています。
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| アメリカの装置で尿を再生した水と若田光一飛行士=2009年5月、ISSで(NASA提供) |
1月に装置がつまる
今年一月、アメリカの水再生装置がつまる問題が起こりました。「尿にまじったカルシウムが固まってつまったのでは」と小口さん。宇宙飛行士が無重量状態で長期間滞在すると、体内のカルシウムが出ていき、骨がもろくなる病気になります。2月、野口さんが部品の交換作業を行いました。
今後、火星などより遠い宇宙に人が行くためには、水の確保がますます重要な問題となります。JAXAが研究を進めている水再生装置は、尿も飲料水に再生できますが、蒸発させる過程はなく、1000万分の1ミリという小さな穴が開いている膜でろ過して、不純物をとりのぞきます。サイズを小さくでき、消費電力をおさえられる利点があります。
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JAXAが研究を進めている水再生装置=東京都調布市のJAXA調布航空宇宙センターで
ウーロン茶(左はし)を装置にかけると、きれいになった水(中央)と廃棄用の水(右はし)に分かれて出てきます |
名水級な日本の技術
取材のときは、ウーロン茶を水に再生するようすを見せてもらいました。再生された水は、においがなく、飲んでみても「元ウーロン茶」とは分かりません。ただし純水ではなく、ミネラル分を加えているそうです。小口さんは「人間が純水だけを長期間飲むと、胃腸の調子が悪くなったり、肌荒れしたりします」と説明します。加えるミネラルの調整で、どの地域の水でも再現できるといい、今は環境省の「名水百選」にも指定されている屋久島(鹿児島県)の水と同じ設定にしているそうです。
今後は、ISSの日本の実験棟「きぼう」に持ちこんで試してみたい考えです。
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2010年3月7日掲載 |
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