朝日小学生新聞
2006年9月8日
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  アジサイの色変化

植物毒のアルミが生み出す複雑さ

「花びらのようにみえるのはガクで、本当の花は真ん中にある」と説明する吉田さん

 梅雨の中、涼しげに咲く真っ青なアジサイが好きです。2年前、近所の家から青いアジサイの枝をもらい、挿し木しました。ところが咲いた花は赤色。いったいどうしたことか。

 「きれいな青い花を咲かせたい」

 花の色を研究している名古屋大学情報科学研究科の吉田久美准教授をたずねました。

 アジサイの花(厳密にはガク)の色素はアントシアニン。赤も青もこれは共通です。色の変化は、アルミニウムを含む複雑な分子である助色素が左右しています。青はこれが赤よりずっと多いのです。

 愛知県渥美半島は花の栽培が盛ん。アジサイ農家もたくさんあります。「そのプロも青ではとくに苦労してますよ」と吉田さんはいいます。品種ごとに最適な土や肥料の条件が違ううえ、天候にも左右されます。

 JA愛知みなみ農協の鉢物担当者は「枝によるバラつきが出ないよう、土の酸性の度合いや硫酸アルミを含む肥料などを均等にする必要がある」と、苦労の一端をもらします。

 吉田さんの研究室に、近藤忠雄元教授が顔を出し、「だから気に入った鉢植えを持って帰っても、露地植えすると同じ色にはまずなりませんね」といわれてしまいました。

 アジサイは、多くの植物がきらう酸性の土に強く、根が伸びるのを邪魔するので植物毒ともいわれるアルミニウムも平気で吸収して、花の色付けにちゃっかり利用しています。

 「他の植物が生きづらい場所で生き抜くための性質でしょう。原種のアジサイの花は青。赤は人が作りだしたのです」と吉田さんはいいます。

 アジサイの花言葉のひとつは「移り気」。色が変わりやすいからでしょう。

 でも、本来の青い花を咲かせようと人が手を出したとたんに激しく抵抗するアジサイに、わたしは、「外柔内剛(外見はやさしげだが、心は強い)」の言葉を贈りたい。

朝日学生新聞社副社長・内山 幸男
朝日小学生新聞 2008年5月18日付
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