恐竜も東大・阪大もイチョウが好き
イチョウは恋の季節。雄株の花粉が風に舞い、何キロも離れた雌株のめしべにつきます。でもすぐには受精しません。
生きた化石だけあって昔気質で、受精するのは9月ごろ。それまで、めしべが花粉に栄養を与えて精子を育てるのです。
イチョウの精子は1896年、東京帝大の平瀬作五郎助手が見つけました。日本が「明治」になってからまだ30年足らずの時になしとげた世界的発見でした。
高等植物はふつう精子を作りません。花粉管がめしべの奥まで伸び、精細胞と卵細胞が直接受精します。下等植物のコケやシダなどは精子を作ります。イチョウは両者の間に位置します。
イチョウが栄えた時代は、恐竜の時代とほぼ重なっています。「今の鳥のように、恐竜がイチョウの実を食べ、タネをあちこちに広げた」という説もあります。
イチョウの実といえばギンナンですが、わたしたちが食べているのはタネ。柔らかい実の部分(種皮)は強烈にくさいだけでなく、酸性も強い。汁がついただけでかぶれるほどです。「恐竜はあんなものが好物だったのか……」
もっとも、今でもタヌキが食べることは確認されています。わたしはカラスが食べているのをみました。「食べても平気な人もいる」と教えてくれた研究者もいましたが、「よい子はまねしないで」といっておきます。
イチョウの名は、葉の形が鴨の脚に似ていることからきています。中国ではイチョウを「鴨脚樹」とも書きます。「鴨脚の発音は「ヤ・チアオ」。京都には鴨脚さんという古い名家があります。
イチョウの葉は、ロウ成分が水分を蒸発させにくくしているので、落ち葉たきができにくいほど燃えにくい。この、防火性のおかげで街路樹として人気ナンバーワンです。東京、大阪、神奈川では「都道府県の木」に選ばれています。
東京大学のマークや大阪大学の学章がイチョウの葉をデザインしたものだというのも、イチョウ人気を示すものだといえます。
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