「何でも計算」で患者の命も救えた
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プリンストン大学の経済学者が作った「平均気温や雨量データを使ったワインのできの予測式」は、「よく当たる」と専門家をくやしがらせているという |
世界最大のインターネット書店のアマゾン・コムで本を買うと、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という「おすすめ」が画面に現れます。
たとえば、わたしが、ダーウィンの『ミミズと土』を買ったときは、『ダーウィンのミミズの研究』『ミミズで生ごみリサイクル』など5冊の本が紹介されました。わたしの知らなかった本ばかりで、参考になりました。
こうした「おすすめ機能」は、膨大な「お客さま情報」を回帰分析という手法で計算することによって行われています。コンピューターの発達で、膨大な量の計算をすばやく、安くできるようになったからこそできるサービスです。
アメリカ・エール大法学部のイアン・エアーズ教授は『その数学が戦略を決める』の中で、アメリカでは、このように情報を何でも計算してしまう「絶対計算屋」が社会を動かす時代になっているといいます。
ワインのできは? どんな教育法が効果的か? 公共工事に不正はないか?
絶対計算屋の活躍場所は、商取引から犯罪捜査にまでおよんでいるようです。
小児科医・D・バーウイックさんは、多くの統計を計算処理し、「重症患者が集中治療で死ぬのは感染によることが多い」ということを見つけました。そして、医師の手洗いなど、診療のやり方の見直しを提案、現場の医師たちの抵抗をおしのけ、基本動作を徹底させる運動をアメリカ中で展開しました。
その結果、2004年から18か月で、なんと「推定12万人が死なずにすんだ」という成果をあげました。この運動は日本の医学会も注目しています。
「算数は苦手」「何の役にたつのかわからない」という人がよくいます。でも、社会を動かすには計算によるしっかりした根拠が必要な時代になっているのです。その基礎がいまの算数。しっかり勉強しておきたいですね
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